肥薩線、八代─人吉間の鉄路復旧で基本合意 熊本県、国、JR九州 人吉─吉松間は別途協議へ

 2020年7月豪雨で被災して八代(熊本県八代市)-吉松(鹿児島県湧水町)間で不通が続くJR肥薩線に関し、熊本県と国、JR九州の3者は3日、鉄路による復旧を図ることに基本合意した。対象は八代-人吉(人吉市)間の51・8キロで、10年後の復旧をめどとしている。観光での活用に加え、沿線住民の日常利用も意識した県の復興方針案を、JR九州が受け入れた格好だ。人吉─吉松間(35・0キロ)については今後、別途協議する。

 3者は復旧の在り方を議論する「検討会議」を県庁敷地内の県防災センターで開催。八代-人吉間の復旧に向け、「持続可能性を高める」との視点でまとめた四つの整理事項を最終確認した。

 1点目は、地元自治体(自治体が設立する法人含む)が線路や駅舎といった施設を保有し、JR九州が運行を担う「上下分離方式」を採用する。2点目は、観光を軸とした地方創生モデルの実現と「マイレール意識の醸成」による日常利用の創出を具体化する。

 3点目は、観光利用と日常利用の充実が図られるよう、再開前までにめどを付けること。4点目は復旧や運営の在り方、数値目標の設定などについては協議を重ね、「可能な限り具体化する」とした。

 この内容について、さらに議論を深め、3者は25年3月末までに鉄路復旧の「最終合意」を目指す。

 マイレール意識を醸成するため、熊本県と沿線・周辺の12市町村は、職員(合わせて約7500人)が率先して肥薩線を日常利用することを重視。くま川鉄道との連携や、肥薩線の駅でバスを含む2次交通との接続の充実を図る。利用者への助成制度の導入も検討する。イベントなどを通じ、地域の子どもたちが肥薩線の魅力を知る機会も増やしていく。

 八代─人吉間の復旧時期は、これまでの検討会議で県が示した「33年度ごろ」を目標に据えた。復旧費の見込みは八代─吉松間と同額の約235億円とした。

 肥薩線は八代-隼人(鹿児島県霧島市)の全線124・2キロのうち、豪雨被害で八代-吉松間の86・8キロが不通となっている。(樋口琢郎、潮崎知博)

 ◆古宮洋二・JR九州社長の話 関係者のご尽力に深く感謝申し上げる。2024年度末が目標とされる最終合意に向け、肥薩線が将来にわたり、持続的に地域に必要な役割を果たしていけるよう、鉄道での復旧に向けた検討を深度化していく。

 ◆蒲島郁夫知事の話 鉄道による復旧が創造的復興にとって大事だった。4期目の任期中に、復旧にめどを付けるという県民との約束を果たすことができて安堵[あんど]している。今後は木村敬・新知事の下、復旧への取り組みが円滑に進むことを願っている。

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