電撃辞意表明・川勝静岡県知事“差別発言”のナゼ「人間の能力の多様性」の重要さ訴えていたはずが…

静岡県の川勝平太知事(C)共同通信社

「6月議会をもって職を辞そうと思う」

2009年から静岡県知事を4期務めている川勝平太氏(75)が任期途中の“電撃辞任”を表明し、県内外で衝撃が広がっている。

川勝氏は1日に行われた新入職員の入庁式であいさつした際、「実は静岡県、県庁というのは別の言葉でいうとシンクタンクです。毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちです」などと発言。

これが「一次産業に対する差別ではないか」との批判が高まり、真意を説明するために行った2日午後のぶら下がり会見で、唐突に辞意を明らかにしたのだ。

「切り取りによる印象操作」「差別的な意図は全く無かった」。生中継された会見で、こう繰り返していた川勝氏だったが、この言動がネット上で「反省ゼロ」「開き直り」などと大炎上する事態となり、さらに火に油を注ぐ展開となった。

■「本当に体で覚えるべき学問を勉強している者に、温かい目が必要」と発言していた

早大大学院、オックスフォード大大学院などを経て、早大政治経済学部教授、国際日本文化研究センター副所長、財団法人総合研究開発機構理事、静岡文化芸術大学学長などを歴任。ピカピカの「シンクタンク」としての経験を積んできただけに、つい“本音”が漏れたのかと思いきや、かつての川勝氏は違ったようだ。

2014年6月10日の参院文教科学委員会。川勝氏は、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案の審査」のための公述人として出席し、こう発言していた。

「音楽、演劇、美術、こうしたものも試験科目にならないというのは、人間の能力の多様性というものを一部においてしか評価しないということで、誤っているというふうに思っておりまして(略)英数国理社の5科目だけでもって高校卒業程度認定試験を受けさせて、それでなければ学力として中卒になってしまうというような、非常にアンフェアな制度がまかり通っているということに対する抜本的見直しをお願いした(い)」

川勝氏はこの時、人間の「能力の多様性」の重要性を訴え、さらにこう強調していた。

「農業、工業、商業、こうした本当に体で覚えるべき学問を高等学校で勉強している青年たちがいます。こうした者に対してもう少し温かい目が必要であると。農林水産業、商業、工業のみならず、演劇、舞踊、音楽、芸術、スポーツ、こうしたものにおいて、若者の資質や才能を伸ばすことができる21世紀型の実践的な学問教育を奨励したいというふうに思っているわけであります」

この言葉を聞く限り、川勝氏はむしろ受験エリートに代表される勉強人間とは異なり、「野菜を売ったり、牛の世話をしたり」するような多様な人材育成を求めていたようにも受け取れるが、それがなぜ、今回のような発言になってしまったのだろうか。

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