ライドシェア解禁も専門家「タクシー不足の根本解決にはならない」 日本版ライドシェアは業界を変えるか

テレビ愛知

高齢化や過酷な労働環境…全国のタクシー運転手は2019年より6万人減少

2024年4月1日に「ライドシェア」が解禁になりました。「変わるタクシー」を取材しました。

名古屋市昭和区で2日に行われた、タクシーの出発式。車両には「アプリ専用」の文字が。実はこれ、アプリからの配車注文を専門で受けるタクシーで、街中で客をとる「流し営業」はしません。

乗務員は時給制で短時間でも働くことができるため、副業でも勤務できます。名鉄タクシーと配車アプリの「GO」が共同で始めた東海地区初の取り組みということですが、その理由は…

名鉄タクシーホールディングス 浅野丈夫社長:
「昨今、タクシーの供給力不足があり、なんとか改善したい」

背景にあるのはタクシー運転手の減少。要因は運転手の高齢化や過酷な労働環境などで、全国のタクシー運転手の数はコロナ禍前の2019年と比較すると約6万人、2割ほど減っています。

タクシー不足解消に動き出しているのは企業だけではありません。

岸田総理:
「自家用車や一般ドライバーを活用した新たな運送サービスを、2024年4月から開始する」

政府が4月1日に解禁したのは「ライドシェア」です。「ライドシェア」は、プロではなく一般のドライバーが自家用車を使って有料で客を運ぶサービスのこと。客がアプリで申し込むと、依頼を受けた一般のドライバーが客のもとへ向かいます。

「海外のライドシェア」とは違い、「日本版ライドシェア」はタクシー会社が配車やドライバーを管理。運賃は普通のタクシー料金と同程度です。

名鉄タクシーがライドシェア参入目指す 社長「タクシーの供給不足を解消できる」

日本版ライドシェアの仕組み

名鉄タクシーは、この「ライドシェア」への参入も目指しています。

名鉄タクシーホールディングス 浅野丈夫社長:
「タクシー(会社)の管理下のもとで、新しいこの制度(ライドシェア)を使って地域の足になるということができれば、今の供給力不足は解消できるだろう」

ただ一般ドライバーの運転ということで、懸念されるのは安全面です。国交省に提出する申請書に並ぶのは、事故処理やクレーム処理などの体制を確認する項目。管理するタクシー会社に安全への取り組みと、何かあった際の責任を確約させます。

名鉄タクシーは独自の取り組みとして、事故や客とのトラブルが起きた時に素早く対応できるよう、「ライドシェア」に使われる自家用車に通信型のドライブレコーダーを設置させ、遠隔で管理できる体制を整える予定です。さらに…

名鉄タクシーホールディングス 浅野丈夫社長:
「2回面接をするが、2回目に車を持ってきてもらう。会社がチェックして清潔面や車両の整備環境を見て、合格基準に達していないと不合格にする。どんなことがあっても事故を起こさないという観点から、現在のタクシーの指導教育と同等の教育をしていきたい」

名鉄タクシーは、早ければ4月下旬からの事業開始を目指しています。

名古屋や瀬戸などでライドシェア解禁 専門家「現行制度ではタクシー不足の根本解決にならない」

全国のタクシー運転手の人数(全国ハイヤー・タクシー連合会)

ライドシェアは4月1日、一部地域で曜日や時間帯を絞って解禁されました。

愛知では、名古屋市や瀬戸市などが対象で、金曜日の午後4時台から7時台の間、土曜日の午前0時台から3時台の間で、台数を限っての運行が認められています。

ドライバーの条件は、普通免許を取ってから1年以上経過していることなどで、タクシードライバーに必要な2種免許は不要です。

ライドシェアについて、タクシーをはじめとする公共交通に詳しい名古屋大学大学院の加藤博和教授に話を聞きました。

加藤教授は「現状のライドシェア制度では、タクシー不足の根本的解決にはならない」「タクシーの需要が高い時の運賃を上げて、需要が少ない時の運賃を下げる料金体系を導入すれば、安い時にタクシーに乗って移動しようという利用者が増えて、需要が平準化するはず。そうなれば運転手が少なくても、全時間帯で見れば、よりたくさんの客を運べるようになる」と指摘します。

また「タクシー会社から制度つくりについてもっと提案や意見をすべき」と話しています。

© テレビ愛知株式会社