映画ファンに親しまれたミニシアター JR仙台駅東口の映画館チネ・ラヴィータが閉館

JR仙台駅東口で長年親しまれた映画館が、3月末に20年の歴史に幕を下ろしました。ミニシアターとも呼ばれる小さな劇場が映してきた様々な思いです。

「フォーラム仙台でお待ちしておりますのでよろしくお願いします。ありがとうございました」
3月31日に20年の歴史に幕を下ろしたのは、仙台市宮城野区の映画館チネ・ラヴィータです。JR仙台駅に近い立地の良さに加えて、全国一斉公開の映画から通好みの名作まで幅広いラインアップが老若男女に愛されてきました。

チネ・ラヴィータは2004年に閉館した劇場を引き継いでオープンし、2009年には現在の商業施設の中に移りました。運営会社はこの劇場だけではなく、青葉区でもう1つの映画館を営んでいます。
フォーラム運営委員会長澤純社長「ミニシアターという業態は、大体100万都市に1館くらいが成り立てばいいかなと。100万都市に2館だと経営は厳しいので、このままだとお互い共倒れになっちゃうので」
こうした背景により、入居する商業施設との賃貸借契約が終了するのに合わせて閉館を決断しました。

閉館を決断

仙台市太白区在住の映画愛好家、角掛修さんはチネ・ラヴィータの閉館を惜しむファンの1人です。
角掛修さん「(閉館は)ちょっと言葉にならないというか、えーって感じで。これは私の命の次に大切なものなので」
小学1年生の頃から書きためた映画の記録ノートです。時には泊り掛けで東京へ遠征し、2023年は527本を劇場で見ました。
角掛修さん「99本の駄作があったとしても、1本でもきらりと輝く作品に出会えると、もうこれはどうしようもないなって」

閉館まで1週間を切ったこの日、いつものようにチネ・ラヴィータに向かいます。東京などでの勤務を経て、8年前に地元の仙台市に戻ってからは足を運ぶ回数が増えました。
チネ・ラヴィータで鑑賞した作品数は、2023年だけで73本、通算では341本に上ります。映画館は、未知の世界を見せてくれる窓だと言います。
角掛修さん「日本のミニシアターの中でも、それほど上映されないようなとんがった映画をたくさん上映してくれる貴重な窓だったので、それはもう感謝しかないですね」

閉館を惜しむ

チネ・ラヴィータが歩んだこの20年、映画業界は大きく様変わりしました。公開本数は倍に増えました。興行収入はほとんど変わっていませんが、邦画のシェアが7割近くに伸びています。スクリーンを5つ以上持つ大型の映画館いわゆるシネコンが拡大する一方、ミニシアターなどそれ以外のスクリーンは減り続けています。
「映画館に行くかと言われたら行きませんね、あまり。今の時代だったらスマホで見られるから、家で自分の見たい時間に見られたり。サブスクが流行っていて、家でゆっくりしながら自分のペースで見られるので」
「大きなスクリーンで見ることと、ポップコーン食べながら見ることがすごく好きなので、そういった意味では私はすごく好きですね、映画館」
「サブスクとかでは、前に見た作品をもう1回見たい。すぐに見たい作品は劇場で」

閉館までの日々を大切に過ごすチネ・ラヴィータのマネージャー、鵜飼優子さんです。映画館でのアルバイトを通じて魅力にはまり、15年以上働いてきました。
チネ・ラヴィータ鵜飼優子マネージャー「受け付けもやりますし、日々の報告や成績のまとめとかシフトとか全体的に何でもやります」

この日の仕事は映画に造詣の深いお笑いコンビ、ダイノジの大谷ノブ彦さんを招いたトークショー付きの上映会です。鵜飼さんの役割は、イベントを無事に成功させるための裏方です。こうした役目も、この劇場ではこれが最後です。
ダイノジ大谷ノブ彦さん「ここに映画館があったというのだけは、記憶の中に必ず残っているんじゃないかと思いますけどね。すいません何か、真面目なこと言っちゃって(笑)」

観客を第一に

閉館まであとわずか、鵜飼さんは観客のことを一番に考え懸命に働きます。
チネ・ラヴィータ鵜飼優子マネージャー「日々、本当にちょっとつらいというか苦しい感じです。まだ今でも、どうにかならないかとちょっと思っちゃいますね」

最後の営業日、3月31日を迎えました。最終上映作品となる人気のインド映画は、満席となるにぎわいです。閉館を惜しみ、たくさんの映画ファンが集まりました。
「タイミング良くというか運良くチケットが取れたので、東京から娘を呼び寄せて最後に一緒に」「(娘が)生まれてから来られなかったので、コロナとかもあったので残念ですね」
上映されたインド映画を何回も繰り返し見たという女性の姿もありました。
「仕事が大変な時期だったので週末にここに来て見て頑張ろうと、毎週来ていた時期があったのでたくさん元気をもらっていました」

上映が終わっても記念撮影などをして名残を惜しむファン。鵜飼さんも、1人1人を丁寧に見送ります。
フォーラム運営委員会長澤純社長「本当にきょうはありがとうございます。フォーラム仙台でお待ちしておりますのでよろしくお願いします。ありがとうございました」
チネ・ラヴィータ鵜飼優子マネージャー「(大勢の観客が集まり)うれしい気持ちもあるんですけど、悲しい気持ちもあって複雑な心境ではあります。自分が思っている以上に(この映画館が)根付いていたんだなという印象は受けました」

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