「ライフル射撃のレジェンド」定年退職を迎えた元警察官の夢

特集はオリンピックに3度出場し、2024年3月に定年退職を迎えた広島の元警察官。ライフル射撃のレジェンドと呼ばれる男性の次なる夢を追いました。

ライフル射撃の名人として競技者の中で、その名を知らない人はいない中重勝さん (60)。広島県警本部。勤務開始の1時間前の出勤が日課でした。

■中重さん

「おはようございます。いよいよ最後ですね。頑張ります。」

警察官として、42年間勤め上げた中重さん。主な仕事は、人材の育成でした。

■中重さん

「刑事になる人は刑事専門の教育が必要になるので張り込みの仕方や証拠品の扱い方とか専門の人が刑事になる人に教えてあげる」

この日は後任の中小路 警部に業務の引き継ぎです。その最中、中小路警部が気になるのは。

■中小路 警部

「オリンピック、あれ見たんですけど。すぐコツ掴んだんですか?」

中重さんは、ライフル射撃の元オリンピック選手です。1996年のアトランタ以降、3大会連続で出場。その偉業は、数々のメディアにも取り上げられてきました。

■中重さん

「こんにちは。どうぞ」

自宅には、これまでの競技人生で獲得した数々の功績が。

■中重さん

「これがちょっとどれくらいあるのか分からないですけど全日本選手権とかで優勝したメダルです。」

中でも、最も思い出深いというのが、こちら。

■中重さん

「嘘みたいな感じ。まさか勝てるとは思わなかったので」

1994年に広島で開かれたアジア大会。国際試合で初めて優勝した金メダルです。長年、中重さんを支えてきたのが、妻の美和さんです。同じライフル射撃の競技者としても夫の背中を追ってきました。

■美和さん

「やっぱり私は一番のファンだと思っているのでこれが欲しいとか射撃に関してあるならお金のことはいい」

これまで、夫婦二人三脚で歩んできたライフル射撃競技。中重さんには次の目標があります。

■中重さん

「今、エアピストルの日本記録持ってるんですけどそこの更新はやればできると思っている」

自らの持つ日本記録更新へ。中重さんはほぼ毎日、射撃場に通います。1点でも高い点数を取るため装備にもこだわりがあります。

■中重さん

「これ私が独自に開発して 絞りを絞ることで焦点距離が長くなる。頭の中で予習します引き金の感じはこうで。パーンと上手くいく10点に入るイメージをつくって呼吸を整えて射撃姿勢に入る」

「いま撃った成績です」

■記者

「すごいじゃないですか 5連続で10点に当ててる」

先月29日。警察官として最後の日です。同僚に伝えたメッセージは、人材の育成に携わった者としての言葉でした。

■中重さん

「県民のため困っている人のためという気持ちは今も変わることはありません。どうか皆さん体には十分注意して県民の安全安心にご尽力いただきたい」

退職を機に、中重さんのもとには新たな任務の依頼が入っていました。

■中重さん

「今度は身体障がい者の射撃のコーチという新たな仕事私が今まで経験したことを(市民に)恩返ししたい」

警察官の育成からパラリンピック選手の育成へ。オリンピックを3度経験したレジェンドは、次なる夢に向け、挑戦を続けます。

【2024年4月3日 放送】

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