【連載コラム】第58回:今季初のノーヒッター達成! アストロズのロネル・ブランコって誰!?

写真:ノーヒットノーランを達成したロネル・ブランコ ©Getty Images

日本時間4月2日、MLBでは早くも今季初のノーヒッターが達成されました。達成したのはアストロズのロネル・ブランコ。昨季までメジャー通算わずか2勝だったドミニカ共和国出身の30歳の右腕です。ノーヒッター達成のニュースを見ながら「ブランコって誰!?」と思った方も多いのではないでしょうか。

ブランコはフランバー・バルデス、クリスチャン・ハビアー、ハンター・ブラウン、J・P・フランスに次ぐ先発5番手として開幕を迎えました。しかし、もともと先発の一角を担う存在とは考えられていたわけではありません。今季のアストロズは大黒柱のジャスティン・バーランダーが肩の不調で出遅れているのに加え、ホセ・ウルキディも前腕を痛めて離脱。ルイス・ガルシアとランス・マカラーズJr.はいずれもヒジの手術で戦列を離れており、故障者続出のなか、オープン戦で好投していたブランコが開幕ローテーションに抜擢されることになったのです。

ブランコがプロ入りしたのは22歳のとき。通常、中南米の有望株は16歳の誕生日を迎えた時点でMLBの球団と契約することが多いため、ブランコのプロ入りは異例の遅さと言えます。ブランコ自身の話によると、ドミニカ共和国で複数の球団のトライアウトを受けたものの、なかなか合格できなかったようです。しかし、自身のトレーナーがフリオ・ロドリゲスも担当していたため、フリオの視察に訪れたアストロズのスカウトの目に留まり、そこからトントン拍子に話が進んでアストロズと契約することになりました。

契約金は5000ドル。この金額からもブランコが決して大きな期待を背負っていた選手ではないことがわかります。ただし、アストロズが20歳前後のアマチュア選手と契約するのは珍しいことではなく、バルデスは21歳、ガルシアは20歳、ハビアーは18歳でプロ入りし、そこから先発ローテーションの一角を担う投手へと成長を遂げています。ブランコはその系譜に連なる“最新作”と言っていいでしょう。

ブランコはマイナー通算202登板のうち、先発したのは34試合だけ。メジャーでも昨季までの24登板のうち、先発は7試合だけでした。本格的に先発を務めるようになったのは今季が初めて。オープン戦では5試合に登板して3勝0敗1セーブ、防御率0.00、被打率.118という好成績をマークしました。レギュラーシーズンでの初登板がノーヒッターだったため、ブランコはオープン戦も含めて今季まだ失点をしていないということになります。

ノーヒッター達成後、「僕にとって非常に長い道のりだった。浮き沈みが激しく、何度も転び、そのたびに立ち上がった。でも、そうした経験があったから、この瞬間を迎えることができたのだと思う」と語ったブランコ。現地時間4月1日のノーヒッターは、日付上では2001年の野茂英雄さん(4月4日)の記録を更新して史上最速となりました。また、ジョー・エスパーダ新監督には初勝利をプレゼント。監督としての初勝利がノーヒッターになったのは史上初めてのことです。

注目度の低い選手を重要な戦力へと育て上げることで強豪としての地位を維持してきた近年のアストロズ。今季は30歳の新星ブランコがチームの快進撃を牽引するかもしれません。

文=MLB.jp 編集長 村田洋輔

© 株式会社SPOTV JAPAN