【動画】「前より渋滞している気が…」国道50号今井町交差点 改良工事後に指摘続出 一体何が? 群馬・前橋市

「西から南」の右折レーンに収まらず、導流帯を踏んで待つ車の列=3月27日午後2時ごろ、前橋市今井町

 国道50号と国道17号上武道路が交差し、改良工事を終えたばかりの「今井町」交差点(群馬県前橋市今井町)で、特定の方向へ走るドライバーから「通過に時間がかかるようになった気がする」「前より渋滞していないか」と疑問の声が上がった。それは、西(50号前橋方面)から南(上武太田方面)へ向かう右折レーン。3月25日に使用が始まると、国や県警に複数の意見が寄せられ、4日後の29日に急きょ信号の長さが変更された。工事で大きくレーンが変化したのは、むしろ対向車線の方なのに。一体何が起きたのか。

 「ブオーン」。利用開始直後の3月27日午後2時ごろ、記者は「西から南」の右折レーンを観察した。矢印信号が点灯するなり、アクセルを踏み込んで右折を急ぐ車が何台もあった。前の車に続いて交差点に進入したものの、途中で矢印が消えたため立ち往生してしまう車すらあった。

 1回の矢印信号で10~15台が右折した。じきに20台以上の車が160メートルある右折レーンを埋めていき、導流体(ゼブラゾーン)を踏み、信号が変わるのを待っていた。

 交差点を東西に走る50号と、その上を南北寄りにまたぐ上武道路の高架。この二つの国道で、片側1車線の区間を2車線に広げようという事業が同時に進んでいる。

 道路管理者の国交省高崎河川国道事務所(高崎市)によると、今回の工事で、50号は交差点から東へ約500メートルの区間を広げた。上武道路は交差点から北へ2.4キロの区間を拡幅した。交差点の東(50号桐生方面)と北(上武渋川方面)が便利になった。

 これまで、今井町交差点には「東から北へ右折できない」という根本的な欠点があった。すぐ東隣に「今井町東」交差点があり、右折レーンを造るために法令で必要な空間が足りなかったという。ドライバーは周辺の県道などへ迂回(うかい)していた。

 今回の工事で、東交差点そのものを東へ遠ざけて造り直した。東交差点に接続する市道は大きく曲がりくねったが、今井町交差点に念願の「東から北」の右折レーンができた。

 果たして「西から南」ルートはどんな影響を受けたのか。同事務所は三つの可能性を挙げる。

① 停止線が約20メートル後退した。「東から北」の動線を邪魔しないよう、西からの車線は停止線が後退した。その差は右折レーンで約20メートル、直進車線では約40メートルに及ぶ。
② 青信号のうちに交差点へ進めなくなった。通常の青信号では、交差点を多少進み、対向車線にかかる直前で待機できる。改良後の信号は、赤信号のまま矢印で制御する方式に変わった。右折車は矢印が点灯するまで、停止線で待たなければならない。
③ 右折可能な時間が減った。

 信号を担当する県警交通規制課に③について聞くと、基本パターン同士の比較で、従来は1サイクル170秒のうち青83秒と赤(直進と右折の矢印)30秒の計113秒で右折できた。対向車が多いため青では当然待つとしても、工事後は赤(直進と右折の矢印)の31秒だけで、3割に満たなくなっていた。 

 確かに、右折しにくい。ドライバーたちの体感は、データで裏付けられた。

 ドライバーや上毛新聞の問い合わせを受け、県警は利用開始4日後の3月29日、信号の右折時間を10秒増やして41秒に調節した。車の流れは比較的円滑になったとみられ、推移を見守っている。

 他の場所でも道路の新設、商業施設の開業などで、車の流れは刻々と変わるという。県警はあちこちで、信号の長さを常に微調整している。また、今井町交差点には感知器が備わっていて、信号を切り替えるパターンが通行量に応じて細かく変化するという。

 一方、同事務所は「今までと違う部分はあるが、そもそもどの方向にも進めるのは交差点として普通」と、道路構造に問題はないと捉える。今後、人々の声を聞いて「東から北」の利便性が向上した効果を確かめたいという。

 あちらを立てればこちらが立たず。今回の取材で、関係者が口をそろえたのはバランスの難しさだった。交通量の多い国道同士が交わる、県内でも数少ない交差点には、さまざまな人の期待が交差していた。

 とりあえず、安全運転しましょう。

© 株式会社上毛新聞社