自由で気ままでも… 魅惑の「ソロ登山」に潜むリスクとは!? 危険すぎる「トラブル」実体験レポ

雄大な景色を楽しみながら自分のペースで歩く「ソロ登山」(撮影:山歩ヨウスケ)

単独で登山をしているハイカーがいるのはなぜか? それは「ソロ登山」には、たくさんの魅力があるからだ。しかし、単独での登山にはやはりリスクが伴うのは間違いない。

今回は「ソロ登山」の魅力と、知っておきたいリスクやデメリットについて、筆者の体験談を交えてお伝えしたい。

■「ソロ登山」の魅力(メリット)

●自分のペースで歩ける、行動の自由度が高い

つらい時はどんなにゆっくり歩いてもいい。ペースは自分次第

「ソロ登山」では、誰かに合わせることなく自分のペースで行動できる。複数人での登山では同行者に配慮しながら行動するため、知らず知らずの間にオーバーペースやスローペースになり、自分のペースを崩されてしまうことがある。自分のペースで歩くことがどれだけ登山を楽しくするのかを「ソロ登山」を体験してみるとよくわかる。

好きなタイミングで休憩でき、気に入った景色を時間の許す限り堪能できる。また、仲間との日程調整の必要がなく、自分の都合で行きたい山に行くことができるのも大きなメリットだ。

見晴らしのいい場所で好きなだけ景色を楽しめるのも「ソロ登山」の醍醐味

●登山計画が簡単にできる

グループ行動ともなると、どうしても興味のない場所に付き合うことも出てくる。仲間が計画したルートに全て賛同できないこともあるだろう。「ソロ登山」の場合、登山ルートも寄り道も全て自分で決めるので、行きたい場所のルートも自由に計画できるのだ。

自身で全て計画するということは、行動時間や体力面でレベルにあったルート選定も自己責任となる。筆者はそこも「ソロ登山」の魅力であると感じている。全てを自分で決めるため行動計画をしっかり把握した上で出かけることができる。

●出会いや交流がある

「ソロ登山」では思いもよらぬ出会いや交流が生まれることもあり、筆者はそれも楽しみの一つだと感じている。グループで行動している時はそのグループ内での交流が主となるため、他のグループと交流することはあまりないが、一人で行動しているとなぜか他のグループや同じように単独で行動している人と交流が生まれるから不思議だ。

交流が生まれるのはいいことだと思うが、人によってはそこまでの関係を望んでいないこともあるので見極める感覚も必要だ。一方的な話しかけがトラブルの原因になることも考えられるので、お互い気持ちよく過ごせるような距離感や空気感を大切にしたい。

■実際に体験した「ソロ登山」のリスクやデメリット

ここまで「ソロ登山」の魅力をお伝えしてきたが、「ソロ登山」にはリスクやデメリットもある。深い自然の中に入っていく登山での単独行動はグループと比べ危険が大きいものとなる。

考えられるリスクやデメリットをしっかりと把握したうえできちんと備えをし、楽しむことが鉄則となる。続いては筆者が実際に体験したことを交えてリスクやデメリットを紹介する。

●遭難時の発見が遅れる

道迷い、転倒によるケガ、滑落などで行動不能になってしまった時、単独での行動では発見が遅れてしまう。複数人で行動している場合、一人が動けなくなってしまっても助けを呼びに行くことができるが、一人ではその場で助けを呼び続けるしか方法はない。

行動不能になってしまった時に誰にも気付いてもらえないような状況を避けるため、登山届の提出はもちろん、家族や知人に行き先を事前に伝えておくことを徹底してほしい。

山中で日没を迎えて行動不能になってしまうケースもある。筆者が自身の体力とコースタイムを見誤り、下山が日没ギリギリになってしまったことがあった。

迫り来る日没への焦りから、行動が雑になり転んでしまったのだ。幸いケガもなかったので良かったものの、一歩間違えれば危険な状況になったかもしれない。

「ソロ登山」では自身の体力に合わせ、時間に余裕のある計画や、その山が自身のレベルに合っているかを慎重かつ冷静に判断しなければならない。

●道迷いの可能性や発見が遅れる

遭難と同様に道迷いにも気づきにくいのが「ソロ登山」のデメリットである。グループで行動する際に登山計画を共有し、全員が把握しておくことで道迷いを早期に発見したり、防止できる可能性が高くなるが、一人では意識的にルート確認をしながら行動する必要がある。

登山道から外れてしまうことも危険だが、単純に分岐点で間違った方向へ行ってしまうことも避けたい。
人気の山で迷うことなどないと過信していた筆者は、分岐点から30分ほど歩いてから間違った方向へ歩いていたことに気づいたことがあった。行動時間に余裕があったためトラブルにはならなかったが、時間に余裕がなければ日没までに下山できなくなってしまう可能性もあるので、分岐点ではしっかりと方向を確認したうえで行動したい。

地図アプリは大変便利だが、それだけに頼っているとスマートフォンのバッテリー切れなどで危険を招く可能性があるので、筆者は紙の地図とコンパスを必ず携行するようにしている。

■全てのアクシデントやトラブルに対応しなければならない

ケガや遭難などもそうだが、故障や破損などのアクシデントも一人で対応しなければならない。起こりうるトラブル対策に「エマージェンシーキット」や「ファーストエイドキット」の携帯は必須である。

ハイキングに出かけた山中で登山靴の靴紐が切れたことがある。「エマージェンシーキット」の中に結束バンドを忍ばせていたため、靴紐の代用として対応できた。基本的なことだが、遭難など万が一に備えて非常食の携帯も忘れないようにしたい。

■必要な装備を全て自分で担ぐ

泊まりの登山では荷物の重量が15kg近くになることもある

「ソロ登山」では装備を全て自分で背負う必要がある。グループ行動ならテントの運搬をポール、フライシート、本体などにバラして分担できるが、単独ではそうはいかない。

時に荷物の総重量が15kgを超えるようなケースもあり、体への負担は大きくなる。普段なら普通に歩ける距離や時間でも、荷物の負担が大きくなることで思ったように行動できなくなるので「ソロ登山」を始めるなら、まずは日帰りコースから始めてほしい。

■リスクやデメリットを把握したうえで「ソロ登山」を楽しもう

リスクやデメリットを考えると躊躇してしまうが、しっかり準備と備えをしたうえで、余裕をもった計画を立てて行動すれば「ソロ登山」体験は素晴らしいものになるはずだ。

本格的な春の訪れはもうすぐそこまで来ている。「ソロ登山」で自由な山歩きを楽しんでみてはどうだろうか。

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