JR肥薩線・八代-人吉の鉄路復旧合意 JR九州と国、熊本県 吉松間は復旧の有無含めて別途協議

〈資料写真〉線路の土台部分が流出し、傾いたまま放置されるJR肥薩線の線路=熊本県球磨村(2023年7月撮影)

 2020年7月の豪雨被害で八代(熊本県)-吉松(鹿児島県湧水町)間で不通が続くJR肥薩線を巡り、熊本県と国、JR九州は3日、川線と呼ばれる八代-人吉(いずれも熊本県)を鉄路で復旧させることで基本合意した。残る不通区間で鹿児島を含む3県にまたがる山線の人吉-吉松については、JR九州が復旧の有無を含め新たな協議の場を設ける方針を改めて示した。

 熊本県はこれまで観光を軸とした利活用策や復旧費の軽減策、自治体が線路や駅舎などを保有しJRが運行を担う「上下分離」を提案したが、JRは被災前から営業赤字が続いており持続可能性の観点から慎重姿勢を崩さなかった。3日、熊本市であった3者会合では、熊本県が自治体職員の積極的な公務利用や駅周辺の2次交通の充実などを示しJRが受け入れた。

 JR九州の古宮洋二社長は、熊本県の復興策について「マイレール意識の醸成による日常利用創出について、沿線一丸で実行するという決意と具体策を示してもらった」と評価。「24年度末目標の最終合意へ向け、肥薩線(川線)が持続的に地域に必要な役割を果たしていけるよう鉄道復旧への検討を深めていく」とのコメントを出した。

 JR九州の試算では、川線と山線の復旧費は合わせて約235億円。約9割は国と熊本県が負担する。区間別の被害件数は、橋桁の流失や駅舎の浸水したりするなど川線が419件、山線が29件の計448件。自治体別では、鹿児島県は湧水町の1件のみとなっている。

 熊本県はこれまでの3者会合で、33年度前後の運転再開を提示している。

JR肥薩線検討会議後、報道陣の取材に応じるJR九州の松下琢磨総合企画本部長=3日、熊本市の熊本県防災センター

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