JR肥薩線の鉄路復旧「一体じゃなかったのか」…人吉-吉松の「山線」沿線首長ら落胆、新協議の場に望みつなぐ

JR肥薩線検討会議後、報道陣の取材に応じるJR九州の松下琢磨総合企画本部長=3日、熊本市の熊本県防災センター

 2020年7月の豪雨災害から約3年9カ月。2年間に及ぶ協議の末、JR九州が3日導き出した結論は、八代-人吉(通称・川線)の鉄路での復旧だった。不通区間の復旧は「一体で」というJR九州の言葉を信じて議論を見守ってきた人吉-吉松(山線)の沿線からは、山線の新たな議論の場を設ける方針に「残念」と落胆の声がある一方で、「復旧の可能性があるということ」と望みをつないだ。

 川線の鉄路復旧で基本合意したJR九州と国、熊本県の3者会合。終了後、同社の松下琢磨取締役常務執行役員は、山線の復旧に「今後の議論」と言葉を濁した。川線の復旧議論で同社は当初から「復旧後の持続可能性」にこだわった。被害が軽微でも「日常利用がほぼない」(古宮洋二社長)として、山線復旧に一時停止を求めたともいえる。

 鹿児島県湧水町や宮崎県えびの市などは、山線の先行復旧を要望。その際、JR九州からは「一体での復旧」と断られた。池上滝一湧水町長は「山線だけの再開はないとは思っていた。ただ川線の復旧は朗報といえば朗報。山線にもつながれば」と期待。えびの市の外赤裕二企画課長は「引き続き一体復旧の方向性でお願いしたい」と念を押した。

 新たな協議の場は、鹿児島、宮崎両県を加えた5者会合なども考えられるが、JR九州の担当者は「議論の日程や構成などは未定」と繰り返す。熊本県が示したような振興策提案にとどまらず、復旧費の負担や上下分離方式などを求められる可能性も捨てきれない。

 3者会合にオブザーバー参加した鹿児島県交通政策課の関山恵理子参事は「山線については何も示されておらず今後の議論になる。3県で連携して議論を深めたい」と冷静に受け止める。宮崎県総合交通課の三原研一副主幹は「利用者が少ない区間だけに、てこ入れ策を求められるのでは」と推測した。

 スイッチバックやループ線といった魅力の多い山線。線路はないものの利用市民が多い鹿児島県伊佐市の橋本欣也市長は「本当は一体で復旧してもらいたかった」と残念がる。インバウンド(訪日客)誘致などへの期待もあり、「利用促進策を一緒に考え意見を出し合いたい」と前を向いた。

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