「恐怖よみがえった」 台湾地震で富山の現地社員

地震により散乱した展示会場=台北市内(ユーさん提供)

  ●25年前も経験

 台湾で3日に発生したマグニチュード(M)7.2の地震で、現地に事務所を構える富山県内の企業も被害を受けた。「あの日の恐怖がよみがえった」。25年前の台湾中部大地震も経験したジェック経営コンサルタント(富山市)の社員ユー・ティン・インさん(32)が富山新聞社の取材に応じた。ユーさんは、友人から続々と伝えられる惨状に安否を気遣った。

 「橋が揺れて通行できない。どうしよう」「電車が動かない」。午前8時の発災直後から、ユーさんのスマホには建物が倒壊し道路がひび割れた惨状を伝える写真とともに、友人から連絡が入った。

 ユーさんは当時、震度5弱の揺れに見舞われた台北市のアパートでルームシェアする3人といた。「いつもより横揺れが長く、想像より大きな地震だった」。幸い、アパートに目立った被害はなく、勤務先の状況を確かめるため急いで事務所に向かった。

 事務所が入居しているテナントビルは、超高層ビル(台北101)に隣接した立地で、ビル1階の催事場が大きく損傷していた。いすは散乱し、天井は一部が崩落。4階の事務所は幸い被害はなかった。

 ユーさんは台湾中部・南投県出身で震源地の東部には友人や知り合いはいないが、SNS(交流サイト)で出回った動画や写真を見て、心を痛めた。

 1999(平成11)年に台湾中部で発生した大地震では、小学1年生だったユーさんは自宅が倒壊の危険にさらされ、1カ月の車中泊を余儀なくされた。今も余震が続く状況に、電気、水、電車全てが止まった当時を思い出し、「これ以上、被害が広がらないよう祈るしかない」と話した。

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