【大相撲】宮城野部屋の歴史に幕 維新力が見た処分の妥当性「世論は『厳しすぎる』と言うけど…」

伊勢ヶ浜部屋を訪れた宮城野親方

大相撲の宮城野部屋が60年以上続いた歴史に幕を下ろした。元幕内北青鵬の暴力問題の影響で、宮城野親方(39=元横綱白鵬)と力士らは1日付で同じ一門の伊勢ヶ浜部屋へ転籍。3日には部屋を象徴する看板も取り外された。今回の無期限閉鎖を巡っては角界内外で賛否両論が渦巻くなか、「平成の牛若丸」の異名を持った元十両力士で元プロレスラーの維新力(63)が見解を語った。

宮城野親方は3日、東京・江東区の伊勢ヶ浜部屋を訪れ、師匠の伊勢ヶ浜親方(63=元横綱旭富士)にあいさつ。約2時間の会談を終えた宮城野親方は「伊勢ヶ浜親方から『全国、地方を回って(弟子の)親御さんに会ってきなさい』と言われた。一生懸命頑張るとは言えない状態だけど、一日一日頑張るという思いです」と神妙な表情を浮かべた。

また、この日のうちに東京・墨田区にある宮城野部屋に掛けられていた看板を撤去。元横綱吉葉山から60年以上にわたって続いてきた部屋の歴史が、名実ともに終わりを告げた。そうした中、日本相撲協会が下した処分の妥当性を巡っては、今でも角界内外で賛否両論が渦巻いている。師匠だった宮城野親方は「2階級降格」「報酬減額」の懲戒処分のほか、部屋の無期限閉鎖という〝厳罰〟まで言い渡された。

維新力は「世論は『厳しすぎる』だとか『白鵬さんかわいそう』とか言いますけど、僕は妥当だと思います。確かに45回優勝した大横綱ですが、万歳三唱、三本締め、土俵上でのカチ上げ、張り差し、あと物言いがついてないのに土俵に上がらない…現役時代の振る舞いが大きなマイナスですよね。親方になるときも誓約書を書かせて『これを守るなら部屋を持たす』と段階を踏んでいましたから」と指摘する。

何より重要なのが「今後」だという。伊勢ヶ浜部屋は角界1、2を争う稽古の厳しさで知られており、転籍による相乗効果も期待できる。維新力は2010年に木瀬部屋が北の湖部屋に吸収合併された例を挙げ「2年間預かって、そこで(木瀬部屋の)徳勝龍という(20年初場所で)優勝した平幕力士がいたじゃないですか。彼は北の湖さん(元横綱)の左四つの形を教わって強くなった。(十両)伯桜鵬は春場所8勝7敗に終わりましたけど、伊勢ヶ浜親方の指導でどんどん強くなっていくんじゃないかな。あれだけたくさん関取を出されているので、番付が上がっていくと思う」と予想する。

一方で、転籍に伴う問題もある。「伊勢ヶ浜勢と宮城野勢の人間関係というか。昔(1993年)、二子山部屋と藤島部屋が合併したときもいろいろな問題がありましたし。二子山部屋は古参の力士が多かったから、若手が多かった藤島部屋の力士は気を使うじゃないですか。宮城野親方は稽古場以外は優しそうな感じですが、伊勢ヶ浜親方は私生活から厳しいイメージ。伊勢ヶ浜親方の指導に若い子がどこまで耐えられるか。指導方法も変わってくるので、そういうギャップはある」

また、伊勢ヶ浜部屋の横綱照ノ富士と宮城野親方の〝関係〟も懸念される。「照ノ富士さんと仲がよろしくないようですが、そこは割り切ってやるしかないですよ。現役時代、2人にいろいろあったかもしれないけど、今回伊勢ヶ浜一門が宮城野親方のために動いてくれたわけですから」と宮城野親方に〝大人の対応〟を求めた。

果たして名門部屋は再興できるのか。維新力は伊勢ヶ浜親方が65歳の定年を迎える来年7月が一つのポイントになるとした上で「宮城野親方が横綱という現役時代のプライドを捨て、初心に戻って伊勢ヶ浜親方の指導をしっかり見ていただいて、強い力士を育てていただきたいなと。そこ(来年7月に)で宮城野親方がちゃんとされていれば、再興される可能性がある。ただし、この期間に何かあったらアウトです。いずれ宮城野部屋の看板を上げてほしい」とエールを送った。

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