最高SBや得点王を補強も「遠い」常勝への道 欧州路線を継続も「新外国人」6月退団【【浦和レッズ「開幕5試合」で分かった現在地と大問題】(3)

浦和レッズは常勝軍団への道を歩めるか。撮影/中地拓也

2024年のJ1リーグが開幕し、第5節までが終了した。まだまだ先は読めないが、注目されるビッグクラブのひとつが浦和レッズだろう。そこで、ここまでの5試合で見えてきた浦和レッズの現在地、そして今後を、サッカージャーナリスト後藤健生がスクープ考察する。

■シーズン開幕前「優勝候補」に挙がった理由

今シーズンの開幕前、一部には浦和を優勝候補に挙げる人たちもいた。

根拠は、ペア・マティアス・ヘグモ監督と新加入の外国籍選手の存在だった。

ヘグモ監督はノルウェー人。母国ノルウェーやスウェーデンの数多くのクラブを率い、また年代別ノルウェー代表やノルウェー女子代表監督を務めた経歴を持つ。そして、女子代表として、2000年のシドニー・オリンピックで金メダルを獲得した。

その、“ヨーロッパの名将”がやって来たというのが「浦和レッズ推し」の大きな理由だった。

だが、ノルウェーとスウェーデンという同一文化を持つ地域から外に出たことがない指導者であり、日本という環境にどこまで適応できるのかという疑問もあったし、そこまで高く評価するほどの実績を持つとも思えなかった。

もちろん、浦和にフィットして素晴らしい実績を作り上げる可能性はあるものの、ほぼ未知数の指導者と考えるべきだったろう。

また、スウェーデン人のサミュエル・グスタフソンとノルウェー人のオラ・ソルバッケンという新加入選手に対する期待も大きかった。

ノルウェーのマリウス・ホイブラーテンやデンマークのアレクサンダー・ショルツも加わって、浦和は北欧勢が多数を占めている。国籍こそ別だが、北欧3国は同一文化圏であり、言語的にも互いの母国語だけで十分にコミュニケーションが可能だ。その点では、ノルウェー人指揮官の登場はチームにまとまりをもたらすかもしれない。

だが、グスタフソンもソルバッケンも、それぞれの国で代表経験がある程度の選手。スウェーデンやノルウェーは、ヨーロッパの中では中堅国であり、各国リーグも中堅クラスだ。いわゆる「5大リーグ」とは戦力面で大きな違いがあり、こうした中堅国のリーグはJ1リーグと同格と考えたほうがいい。そして、中堅国の代表も日本代表と同格だ(FIFAランキングでは日本の18位に対して、デンマークは21位、スウェーデンは26位、ノルウェーは46位)。

確かに、外国人選手の加入によって、高さとかプレー強度という日本人選手にはないものが加わることは期待できる。だが、中堅国の「代表経験がある」程度の選手が加入することで、一気にチーム力が上がることを期待するのは無理なことだろう(約30年前にJリーグが開幕したころなら、ヨーロッパの現役の代表クラスなら決定的な存在となれただろうが)。

実際、グスタフソンは別格扱いというほど重要な役割を任されているものの、ソルバッケンは浦和加入以降、これまで出場機会を獲得できていないし、「6月退団」という情報も飛び交っている。

■当たりはずれが大きい「外国籍選手」の補強

浦和は、Jリーグの中では豊富な資金力を持つクラブだ。

その資金力を使って、毎年、積極的な補強を行っており、監督も、この4年間は毎年のように代わっている。

2021年と22年はスペイン人のリカルド・ロドリゲス。2023年はポーランド人のマチェイ・スコルジャ。そして、今シーズンからはノルウェーのペア・マティアス・ヘグモだ(スコルジャ監督退任はクラブ側の判断ではなかったが)。「ヨーロッパ路線」が続いている。

そして、リカルド・ロドリゲス時代には数多くの選手が加入し、それまでクラブに貢献してきたベテラン選手が次々と放出された。今もチームの中盤を支える岩尾憲、伊藤敦樹、小泉佳穂はこの頃に加入した選手たちだ。

そして、2021年にはともにデンマーク人のキャスパー・ユンカー(現、名古屋グランパス)とショルツが加入したのをはじめ、オランダのブライアン・リンセン、そして2023年にはノルウェーのホイブラーテンと北欧出身の選手たちも次々と補強してきた。

だが、本当にチームのために貢献できた外国籍選手は加入当初のユンカーや今も浦和の守備を背負って立っているショルツとホイブラーテンのセンターバック・コンビくらいのもの。

外国籍選手の補強というのは、やはり当たりはずれが大きいと言わざるを得ない。

■J1得点王が加入も「見えない」優勝争い参入

また、浦和は国内あるいは日本人選手の補強にも積極的だ。

元日本代表の酒井宏樹は2021年に浦和に加わったが、今でも日本最高のサイドバックであることを証明し続けているし、昨年は森保一監督時代の初期に日本代表の攻撃陣の一角を担った中島翔哉が加入。さらに、今シーズンは一昨年のJ1リーグ得点王、チアゴ・サンタナも引き抜いた。

こうした補強ができるのは、豊富な資金力があるからであり、実際、選手層の厚さが後半の強さにつながり、今シーズンも試合終盤の怒涛の攻撃で得点を決めて、勝点を積み重ねてきたのは冒頭にご紹介した通りだ。

しかし、「こうした大型補強を続けても常勝軍団を作ることができない」ということは、浦和のこれまでの歩みを見れば明らかだろう。

今シーズンも、今後、ヘグモ監督や攻撃の組み立てのカギを握るグスタフソンがJリーグのサッカーに慣れていけば、次第に安定した戦いができるようになるかもしれないが、試合内容が劇的に改善されて優勝争いに加わることができるようには思えない。

常勝軍団を作るには、川崎フロンターレがかつて行ったように、将来、どのようなサッカーを目指していくのか、クラブとしての方針を定めて、若い選手を育成し、プランに合った指導者を招聘しながら、時間をかけてチームを作っていくしかないのではないだろうか。

もちろん、現在チームを率いているヘグモ監督が、プロ監督として目の前の試合で結果を残しながら、同時に将来へのレールを敷いてくれるような名将であってくれれば、それが最も望ましいのだが……。

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