本多利範が語る「コンビニに求められる、さらなる変化対応」とは

日本で本格的なコンビニエンスストア(コンビニ)が産声を上げたのは半世紀前。以来、小商圏をねらった独自の品揃え、売場づくりで支持を獲得、コロナ禍を経た今も成長を続ける。ただ近年、ネットで買物を済ませる動きも見られる中、顧客層の変化も見られる。本稿は新連載「教えて本多利範さん!」の第4回です。

Adene Sanchez/iStock

各社とも最高日販を記録

日本で本格的なコンビニが生まれたのは1970年代。最大手、「セブン-イレブン」については1974年5月、東京都江東区に1号店、豊洲店がオープンしている。以来、実に半世紀もの長い時間が流れた。

小売の業態は20年サイクルで新陳代謝すると言われる。古い業態は一定期間で新しいものに取って代わられる。百貨店や総合スーパーの閉店・撤退についてのニュースが相次いでいることからもそれは明らかだろう。その中でコンビニは今も成長を続けている。小売業でこれほど長い間、高い収益性を保ち続けている業態はほかになく、驚くばかりだ。

さて、2020年初頭からのコロナ禍が落ち着き、19年との比較では各チェーンとも総じて以前の勢いを取り戻してきた。さらに足元では大手各社が最高日販を記録。客数、客単価も伸び続けている。

なぜこのようなことが可能なのか。それは生活者のニーズに目を向け、取り巻く環境変化へきめ細やかに対応し続けてきたからにほかならない。とくに小商圏でのビジネスを追求したことが、コンビニ好調の理由だと考える。

最近の変化対応への取り組みを、「セブン-イレブン」を例に紹介する。

もっとも大きいのは商品政策だ。かつて「セブン-イレブン」は、価格よりも商品の価値訴求で集客していた。しかし現在は強いマーチャンダイジング(MD)力を駆使し、「松竹梅」「3階建て」の商品開発によってプライベートブランド(PB)を強化している。

上質なこだわり商品の「セブンプレミアムゴールド」、質の高い日常品の「セブンプレミアム」、確かな品質と安心価格が特徴の「セブン・ザ・プライス」といった、品質、価格の異なるラインアップをそれぞれ充実させている。コストパフォーマンスも高く、食品スーパー(SM)が販売するナショナルブランド(NB)と比較しても遜色がない。

こうした手法によって、昨今の相次ぐ値上げで、生活防衛意識を強める消費者を取り込もうとしているのが、「セブン-イレブン」の戦略だ。

一部の利用客層が変化

「セブン-イレブン」のPBは加工食品のほか菓子、また日用品、雑貨といった分野でも増えている。これにより朝昼晩、いつ行っても日常生活に必要な各種商品が揃う店舗に変わってきた。

雑貨ではタオルもある。百貨店で買えば4000円はするが、コンビニなら1000円。食品、日用品、雑貨を含め、多くの大手メーカーと手を組み、商品開発に活かした成果だ。

「セブン-イレブン」では、価格差を埋めるためPB開発だけでなく、従来は扱っていなかったアイテムを取り入れているのは興味深い。一例は100円ショップ「ダイソー」の商品だ。これは非常によい効果を与えている。

販売動向を分析すると、100円商品のおもな購買層は40〜60代の女性。これは「セブン-イレブン」が取り込もうと努力してきた、主婦層とピタリ一致する。さらに100円商品を買った人は、サラダをはじめとした総菜、そしてファストフードも併せて買っている姿も浮き彫りになっている。その結果、以前よりも来店回数や買い上げ点数、客単価も伸長している。

これらニーズや環境の変化に対応する取り組みによって、コンビニは今も成長を続けているわけだ。

圧倒的な支持を得るコンビニだが、気になる動きもある。それは小商圏化が進んだ結果、業態の垣根が崩れ、コンビニの客層が一部で変化する傾向があることだ。

某専門紙にコンビニの利用状況についての調査結果が載っていた。それによれば、週2回以上利用する人は36.2%と、全体の3分の2以上を占めている。一方、月1回未満の人が22.4%と2割強にも上る。年齢層別の分析では、10〜20代の男性は「全く行かない」という回答も1割以上もあった。

ネットで買物を済ませる動きも強まる中、顧客層も変わってきていると読み取れる。調理麺の品揃えを見ると、大半が500円以上。こうした価格政策も実際のニーズとズレが生じてきているのるのかもしれない。

半世紀にわたり、独自の努力で伸び続けてきたコンビニだが、今後も成長をめざすためには、さらなる変化対応が求められている。

本多利範さんの書籍「お客さまの喜びと働く喜びを両立する商売の基本」

本多 利範 著
定価:1650円(本体1500円+税10%)
発行年月:2022年03月
ページ数:276
ISBN:9784478090787

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