【社説】台湾地震 日本はできる限りの支援を

 台湾できのう、東部沖を震源とする大きな地震があった。日本の気象庁は地震の規模をマグニチュード(M)7・7と推定している。観光地として知られる東部の花蓮では、震度6強が観測された。各地で多数の死傷者が出ているという。

 ゆったりとした台湾の朝の風景が一変した。建物が大きく傾き、砂ぼこりを上げて山肌が崩れるニュース映像は衝撃的だった。

 まだ被害の全容は分かっていない。台湾メディアは2400人を超す死者が出た1999年の台湾中部大地震以来の規模だと報じている。

 国内でも沖縄県与那国島で震度4となり、宮古島とともに最大30センチの津波が押し寄せた。気象庁は、今後1週間は同程度の地震に注意してほしいと呼びかけている。警戒を続けたい。

 台湾は、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートがぶつかる位置にあり、日本と同じく地震が多発する地帯だ。近年もM7程度の地震がたびたび起きてきた。専門家によると、今回はフィリピン海プレートが台湾島に衝突することが原因の直下型地震の可能性があり、海岸線に沿って分布する活断層で起きたとみられる。1月の能登半島地震と似たメカニズムだろう。

 台湾政府は中部大地震を受けて耐震基準を強化したが、対策が行き届いていたとは言い難い。台湾を訪れる観光客には、古い建物がひしめく街並みに驚く人が多い。都市部では屋上に階を上積む違法な増築が後を絶たないという。かねて指摘されていた耐震性の低さが被害を広げた形だ。建物が倒壊し死者が出た花蓮は人口約30万人の観光拠点でアミ族など少数民族が多い。

 日本は台湾と正式な外交関係がないが、過去の震災では助け合ってきた。中部大地震で日本は救助隊を派遣。阪神大震災で役立った仮設住宅を寄贈した。2011年の東日本大震災では台湾が救助隊を送ったほか、200億円を超す義援金を贈った。能登半島地震でも直ちに救助隊を派遣する態勢をとった。

 日本と台湾は、観光や経済など幅広い分野で強い結び付きがある。台湾が必要とするなら、住民の救助や医療、地震の専門家の派遣など、できる限りの支援をするべきだ。

 中国との関係に与える影響も注目される。今回の地震を受け、中国政府は「心からお見舞い申し上げる」と談話を発表し、「災害救援協力を提供したい」と表明した。中国が寛容な態度で臨めば、緊張が緩和する方向に動く可能性もある。

 中国地方にも広島市や山口県岩国市にまたがる「岩国―五日市断層帯」などがある。活断層のリスクをいま一度、見つめ直したい。

 近い将来に起こり得る南海トラフ巨大地震では多数の死傷者に加え、道路や上下水道、通信が寸断され、集落が孤立したり、救助が遅れたりする可能性も想定しなければならない。これまでの震災で得てきた教訓を十分に生かせるよう、危機感を持って備える必要がある。

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