最高経営責任者(CEO)に求められるリーダーシップとは【現役のCEOが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

有事や危機的な状況下では、CEOのリーダーシップが難局を打開するキーとなります。本記事では『最高経営責任者(CEO)の経営観―夢・理想の未来を拓く実践的技術』(ダイヤモンド社)から、著者の澤拓磨氏が、CEOが発揮すべきリーダーシップの在り方について解説します。

CEOは自分らしさ・ならではのリーダーシップで勝負する

有事や危機的な状況下でリーダーシップを発揮できるのは、最高経営責任者でありラストパーソンであるCEOただ独りである。

そのときCEOが頼ることができ、難局を打開するキーとなるのが、自分らしい・自分ならではのリーダーシップである。

特に逆風下やぎりぎりの局面では、自分の武器、自分が得意とするスタイルがものを言う。それが「オーセンティック・リーダーシップ」と呼ばれるものである。

最適なリーダーシップは環境や状況に応じて異なるが、CEOはどのような環境・状況下にも対応できるよう「オーセンティック・リーダーシップ」を発見・強化し、勝負していく必要がある。

予期せぬ事態が発生してから、短期間であわててインプットした知識をもとに付け焼き刃のリーダーシップを発揮しようとしても、日々急変する状況下に対応し続け、ミスなく最適なリーダーシップを発揮するには、誠に心もとない。

*オーセンティック・リーダーシップとは、自らの倫理観や価値観に基づいて共感・信頼に基づく関係を築き、組織を導く、自分らしい・ならではのリーダーシップ。

CEOは「リーダーシップの旅」を通じてリーダーシップを進化させていく

偉大なるリーダーもリーダーになる以前は、ほかの誰とも大差のないビギナーだ。リーダーシップは、時間をかけ、リーダーシップの旅を通じて、徐々に進化していく。リーダーシップの旅とは、ビギナーがさまざまな人生経験を経ながらリーダーシップを進化させていく、自己変容の物語のことである。

例えば、影響力(人を動かす力)について。リーダーシップを発揮し始めた初期段階のリーダーは、自分自身に対して影響力を持つ。その後、自分以外の集団へ、社会全体へと、影響力を及ぼす範囲を広げていく。

リーダーシップを発揮する方法は多岐にわたる。例えば、リーダーシップは、必ずしもCEO一人で担う必要はなく、ときには、チームを組織し、互いに補完し合いながらリーダーシップを発揮したり、コミュニティ(例えば経済団体)へ参加してリーダーシップを強化するのも有効だろう。

また、IR(投資家向け広報、Investor Relations)やPR(社内・社会全体向け広報、Public Relations)を通じてリーダーシップを発揮する方法もある。そもそもCEOが全ステークホルダーと対面でコミュニケーションすることは難しいため、一対多に対し発揮されるリーダーシップを一対一で行われるようなFace to Faceのコミュニケーションレベルまで強化することも必要になる。

このように目的に合わせていくつかの方法を活用しながら、時間をかけ、経験を重ねながら、影響力を成長させていく。リーダーたるCEOは、リーダーシップの旅人であることを自覚し、さまざまな人生経験の遍歴を重ねながら自己を変容させていくのである。

リーダーシップが死を迎える時とは

リーダーシップに死は存在する。それはどんな時だろうか。「人は三度死ぬ時がある」という。すなわち、「一度目の死はいつか必ずやってくる心臓停止の時、二度目の死は今世から体と心が消滅し物語を進められなくなった時、三度目の死はその人が社会から忘れ去られた時」だ。

それはリーダーにもほぼ当てはまる。リーダーシップを担う者の心臓が止まった時、今世から体と心が消滅し物語を進められなくなった時、そして、リーダーシップを担っていた者に後継者が存在しない時がそれである。

こうなれば、リーダーシップは間違いなく死を迎える。実はここまで先鋭でなくとも、リーダーシップの死を意味する状態が存在する。それは、リーダーが未来への自由と責任を享受する意志を失った時だ。つまりは、リーダーシップを担う者の心が折れた時、リーダーシップは死を迎える。

当然のこと、CEOをはじめとするリーダーシップを担う者は、絶対に未来への自由と責任を享受する意志を失ってはならない。もしも喪失しかかっているのであれば、今一度、取り戻さなければならない。

ついに意志を失ったのであれば、後継者に意志をつなぐか、後継者が存在しない場合はいたずらにコストとリスクを増大させるようなことはせず、潔くリーダーシップの旅を終えるのもやむを得ないことであろう。

澤 拓磨

株式会社TS&Co.創業者兼代表取締役グループCEO

経営変革プロフェッショナル

※本記事は『最高経営責任者(CEO)の経営観―夢・理想の未来を拓く実践的技術』(ダイヤモンド社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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