「長旅による消耗の影響が否めない」負傷交代の久保建英、ソシエダ番記者は代表活動での疲労に警鐘「毎回、地球の裏側の日本まで...」【現地発】

ラ・リーガが再開し、感動が蘇り、各チームともラストスパートに入った。

1部生き残りをかけた厳しいサバイバルを強いられる下位チームを尻目に、レアル・ソシエダは今シーズンもまた上位争いを演じている。これはタケ・クボ(久保建英)に代表されるトップクラスの新戦力の加入が後押しし、チーム力の大幅な底上げが図られたここ2シーズンに限った話ではない。

イマノル・アルグアシル監督が正式に監督に就任して以来、5シーズン目を迎えるが、このまま6位以内でフィニッシュできれば、その5年間すべてにおいてチームは欧州カップ戦出場権を獲得することになる。

指揮官はそのミッションの難しさについて繰り返し強調している。コパ・デル・レイの決勝進出よりも重要度が高いという意見に対してはファンから反発の声も上がっているものの、だからと言ってその価値が色あせるわけではない。

その歴史的偉業に近づいたのは、前述のコパとチャンピオンズリーグに立て続けに敗退した後、チームが巻き返しを見せているからに他ならない。今節も敵地でアラベスを撃破し、リーグ戦3連勝を達成。このアラベス戦は実に27試合ぶりにタケ、オジャルサバル、バレネチェアのトリデンテが揃い踏みを果たした一戦でもあったが、輝きを放ったのは、負傷で欠場したブライス・メンデスに代わってインサイドハーフに入ったアルセン・ザハリャンだった。

昨夏の加入以来、なかなかエンジンがかからない状況に痺れを切らして失格の烙印を押す声も一部に上がっていたが、面目躍如のパフォーマンスとなった。

それはチーム全体にも言え、難敵アラベスを向こうに回し、試合を支配しながら、セットプレーを中心にチャンスを作る力強い試合運びを披露。惜しむらくは、トリデンテの魔法が不発に終わったことだが、もっともスペインに「綿はごまかしがきかない」という諺があるように、自分自身をごまかし続ければ、ほとんど何の役にも立たない。

オジャルサバルはまだトップフォームには遠いし、バレネチェアは故障明け、タケは長旅による消耗の影響が否めなかった。我々はよく連戦による疲労の蓄積を指摘するが、代表チームでプレーするために、果てしない距離を移動することによる影響を忘れがちである。

なかでもタケは、毎回、招集されるたびに、スペインとほぼ地球の裏側に位置する遠く離れた日本を往復しなければならない。北朝鮮との第2戦が中止となったハプニングがあったとはいえ、今回のようにその努力が徒労に終われば、消耗はより大きくなるだろうことは想像に難くない。

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直接の原因はともかく、アラベス戦でタケは前半終了間際に、負傷交代を余儀なくされた。軽度の筋線維の断裂だったが、これまで一度も故障したことがなかった箇所だったため、不安そうな表情を浮かべていたという。

【画像】負傷してピッチに倒れ込んだ久保
どうやら大事には至らなかったようだが、いずれにせよ、改めて明らかになったのは、得点源となるストライカー不在の中、アルグアシル監督が編み出したトリデンテシステムを巡る呪いだ。今シーズンのソシエダにとって、チームをより高みに導く起死回生の一手となる可能性があっただけに、残念でならない。

そのコンディション不良も影響したのだろう、タケは立ち上がりから全開モードとはいかなかった。いつものような果敢なドリブル突破は影を潜め、ソシエダが優勢に試合を進める中、日本人の閃きの欠如が、より多くのチャンスを作り出すことを妨げた。

そんな中、目立ったのは、ザハリャンとのホットラインで、32分にはヒールで又抜きパスを通す高度なスキルを披露。ザハリャン、メリーノ、再びザハリャンを経由して、自らゴール前にクロスを入れるチャンスの起点になった。

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しかしその約10分後、我慢が限界に達してピッチに座り込み、途中交代となった。

言うまでもなくタケのいないソシエダは考えられない。今のところ、来週末のアルメリア戦出場の可能性もゼロではないようだ。控えめに言っても、心強いニュースだ。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸

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