打球直撃で“消えた視界” 止まった15分「終わった」…マウンドに救急車、闘った恐怖

救急車で運ばれるオリックス在籍時の小林慶祐【写真:産経新聞社】

小林慶祐がプロ1年目に受けた“衝撃”

冷や汗が止まらなかった。昨オフに阪神から戦力外を受け、オイシックス新潟アルビレックスBCに移籍した小林慶祐投手は、オリックス在籍時のプロ1年目に想定外のアクシデントに見舞われていた。

新人年の2017年9月30日、ソフトバンク戦だった。6回のマウンドで高谷の打球が右目を直撃した。「打球は全く見えてないですね。よく『ピッチャーライナーはボールが大きく見える』みたいなこと言いますけど……。それすらなかったです」。事情がわからなかった。

「当たった瞬間はあんまり気づいてないので、僕も。血を見て、痛みを感じたんです。気づいたらもう当たった後で(打球が)ライト線の方に転がっていました。ファースト側にボールが転がっていったので『ベースカバーに行かないといけない』と思って、行こうと思ったんですけど、顔が熱かったんです」

立ち上がれず、その場に倒れ込んだ。「顔を触ったら血だったんで……。もう、それを見た瞬間に痛みが走って動けなくなりました」。直撃した箇所が少しでもズレていれば、眼球破裂や失明などにつながる可能性があったという。

打球直撃の恐怖…「右目の視界が真っ白になっていた」

マウンド付近から動けず、緊急事態になった。小林が倒れたまま15分ほど試合が中断。球団は、外野フェンスを開き、救急車をグラウンドまで入れた。搬送された病院で精密検査を受診。CT検査の結果、脳や骨に異常は確認されなかったものの、右眼瞼部上の打撲による裂傷で8針の縫合手術を受けた。

救急車の中での記憶はある。「覚えていますよ。ただただ、痛かったですね。意識はあるんですけど、右目の視界が真っ白になっていた。もしかしたら、目が潰れたんじゃないかなと思ったんです」。恐怖と戦った。

「投げて、振り向いた時にはもう当たっていた。当たった瞬間は、本当に自分に当たったのかどうかもわからなかった。プロ1年目だったので……。1年間でプロ野球生活が終わったのかなと思いました」

だからこそ、新天地でも手を抜かない。マウンドに立てる喜びを、誰よりも懸命に噛み締める。(真柴健 / Ken Mashiba)

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