「どうせ」の連鎖

 「どうせ住むなら新築のおしゃれな物件がいいなあ」と、憧れの新生活に期待を膨らませる人のように、ポジティブな未来とセットになっていることも皆無とは言えない、と書き始めてすぐに気づいたのだが▲副詞の「どうせ」は多くの場合、不本意な結論や結果が動かし難いものとして予想される時に、投げやりな感情や不満を込めて使われる。どうせ遅刻だ、どうせ分かってもらえん、どうせフラれるに決まってる▲「どうせ勝てない」-関係者の談話から取ったのだろう。他紙に“直球”の見出しがあった。衆院長崎3区補選で、自民党が候補者の擁立を断念した。裏金事件の傷は深い▲どうせ逆風、どうせ大苦戦…偽らざる心境ではあろう。ただし、今回の選択を「謹慎」や「自重」と同視するほど有権者はお人よしではない。念を押しておく。不戦敗は紛れもない「負け」だ▲現在の長崎3区は区割りの変更で「どうせ次の総選挙で消える」選挙区だ。しかし、その事情は、政権党が有権者の審判を避けたり逃げたりしてよい理由にはならない。何度でも書く▲主な関係議員への処分がきょう下される。それでも、4月の3補選を再出発の決意を示す場に、という発想は持てないらしい。そんな姿勢がいつもの諦めを連れてくる。どうせ何も変わらない-。(智)

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