トイレでわかる糖尿病…「尿糖試験紙」を尿に浸すだけ 早く見つければ治すことも可能

尿糖試験紙でチェック

体がだるくて喉が渇く、おしっこの量も増えた気がする──。そんな人は「糖尿病」を疑った方がいい。しかし、病院に行くのは面倒くさいという人も多いはず。ならば、薬局などで尿糖試験紙を購入して自分で尿糖を調べてはどうだろう? 糖尿病治療専門医でしんクリニック(東京・蒲田)の辛浩基院長に聞いた。

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「複数の研究から、春先に血糖値が高くなりやすいことが報告されています。冬の間は寒さから逃れるためにたくさん食べて体温を上げようとする半面、身体活動がにぶるからです。しかも、春は花粉症に悩む人が多い。花粉症の人によく使われる鼻炎内服薬の中には、肝臓のグリコーゲンを分解して血糖値を高くする成分が含まれているものもあることから、糖尿病予備群の人が糖尿病に移行するケースも少なくないのです」

血糖値が上がれば、さまざまな自覚症状が現れるが、多くの人は「去年の健康診断では問題なかった」ことを言い訳にして、体が発している糖尿病の自覚症状に目をつぶるケースが少なくない。

ある50代男性は昨年春先に妙に喉の渇きを感じたという。とくに起床後に口腔内が乾き、口臭もひどく、疲労感があった。この男性は花粉症があるため、「口が乾くのは鼻が詰まって口呼吸するからだろう。疲れは寝不足のせい」と思い込んでいたという。

「しかし、この男性は、正真正銘の糖尿病でした。本人に自覚が乏しかったのですが、“牛飲馬食”との表現がピッタリくるほどの食べっぷりで、体重も急激に増えたようです。本人は周囲に『これだけ食べられるのは元気な証拠』などと言っていたそうです。『秋に風邪をひいて病院で診てもらった際、ついでに血糖値を調べてもらったが問題なかった』と言い、糖尿病を疑いつつも、かたくなに自分は糖尿病ではない、と思い込もうとしていたようです」

では、血糖が高い人、その疑いがある人などが血糖値に関して疑いをもったらどうすればいいのか?

一番いいのは病院で血糖値を調べてもらうことだが、自覚症状が軽微な人に病院で検査を受けろ、というのは難しい。簡単な検査でも病院によっては半日、1日がかりになるうえ費用もかかる。薬局などで自己血糖測定器を購入する手もあるが、これも安くはない。そもそも血を見るのも嫌だという人は測る気にもならない。血糖値が気になり、その値を知りたくても二の足を踏む人がいるのは無理もない。

■条件によって濃度が変わる点に注意

ならば、血糖でなく尿糖を調べてはどうか?

「尿とは血液が腎臓でろ過された際に水分とともに体外に排出された不純物です。腎臓が老廃物や毒素を体外に排出するときには、必要なものは再吸収して体内にとどめておくため、健康な人の尿には血液やタンパク質、糖質が含まれることはありません。ただし、血糖が増えすぎれば、腎臓で再吸収しきれない糖分が尿中に排出されます。それが尿糖で、血糖値が160~180㎎/デシリットルを超えると、再吸収されなかった糖分が尿中に漏れ出します」

ただし、試験紙に浸す尿は、脱水になったり、水を大量に飲んだりすると濃度が変わるから注意が必要だ。

「むろん、試験紙だけでは糖尿病の確定診断はできません。ただし、尿糖が陽性になれば、糖尿病かその予備群の可能性が高いので、病院で血糖値だけでなく、ブドウ糖負荷試験を受けることで、糖尿病か予備群なのか、はっきり診断をつけられます」

気になる人は薬局やドラッグストア、あるいはネット通販で尿糖試験紙を購入するのも手だ。値段は枚数や送料の有無により異なるが、数百円~になる。

「製品によって使い方は異なりますが、基本的には試験紙を尿に約1秒浸したうえで、定められた判定時間を経過すると試験紙の色が変化する。その色を付属の判定表で照合することで判断します。尿糖試験紙で検査する場合、食後1時間が血糖値上昇のピークになるので、そのタイミングで調べるといいでしょう」

なお、血糖値が正常の人は食事をいくらとっても食後1時間のピークが140㎎/デシリットルを超えることがないので、食後の尿糖試験紙で色が変わり陽性になることはない。また、試験紙によっては尿糖だけでなく、尿タンパクや尿潜血を調べられるものもある。

「いまは昔と違って、糖尿病と診断されても早期に治療を始めて血糖コントロールをすれば治すことも可能です。また、網膜症、腎症、神経障害、大血管疾患、心筋症、感染症、非アルコール性脂肪性肝疾患などといった合併症を起こさず、天寿を全うできる可能性も広がっています。糖尿病治療で大事なことは早期発見・早期治療です。そのために、定期的な健康診断をしていない人などは、自分でできる尿糖検査も積極的に行うべきなのです」

あなたもやってみては。

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