衆院補選・3選挙区の構図は?東京15区は誰が出る?政治記者が解像度高く解説します!選挙ドットコムちゃんねるまとめ

YouTube「選挙ドットコムちゃんねる」では、毎週選挙や政治に関連する情報を発信中です。

2024年3月31日に公開された動画のテーマは「衆院3補選の展望は?政権に与える影響」。

政権の通信簿と言われる補欠選挙。告示日まであと半月、各選挙区の構図は?朝日新聞・今野忍記者と産経新聞・水内茂幸記者が、状況を整理しつつ、補選の結果予想と岸田政権への影響を展望します。

【このトピックのポイント】
・天王山・島根1区 与野党対決だが「自民党あるある」の影響が
・不戦敗・長崎3区と「負け隠し」の東京15区の裏側とは?
・補選の予想、岸田総理に起死回生策はあるか?

今回の補選、天王山は島根1区?与野党対決の構図だが

まずは島根1区。細田博之元衆院議長の死去に伴って実施される補選です。ゲストの今野忍氏は、「自民党が勝てるとしたらここ」と言われているとの観測を伝えます。

与野党対決となる公算が大。予想される立候補者は次の2人です。

自民党:元財務官僚の錦織功政氏
立憲民主党:亀井亜紀子元衆院議員(共産、国民民主支援の方針)

島根といえば保守王国ですが、水内茂幸氏は、「自民党にとってはかなり厳しい」と、3つの理由を挙げます。

岸田政権の低支持率
細田博之氏個人の問題:安倍派の元会長。生前にはセクハラや旧統一教会問題などの疑惑が解明されなかった。前回選挙でもぎりぎりの勝利。
対立候補の亀井亜紀子氏の血脈:父親は亀井久興元国土庁長官で自民党系。

今野氏は、亀井亜紀子氏は「自民党の票が取れる」勝ちパターンになると予想。野党の勝ちパターンに見られる根拠を次のように示します。

共産党が出馬しないことで野党側に2〜3万票が乗る
自民党(保守票)が取れる

また、ゲストの両名は、対立候補の「弱さ」にも言及します。

今野忍氏「錦織氏は財務省で木原誠二さんの側近、国民民主党玉木代表の同期。勤務経験はあるけれどバリバリ島根の人ではない。土着で県議などをやってきているタイプではない」

MC伊藤由佳莉「なるほど、土地にあまりなじみがない」

島根といえば竹下登元首相や、その弟で復興相や自民党総務会長を経験した竹下亘氏を輩出した旧「竹下王国」でもあります。ゲストの2人は、自民党が強いからこそ起こる、地方の「あるある」問題にも触れます。

今野氏「野党が多くて拮抗していると自民党がまとまれるんだけど、野党が弱いと保守がまとまれない」

細田派と竹下派の県議の不仲がささやかれ、どちらからも候補を立てられなかった結果、今回錦織氏が送られました。保守がまとまれなくても、地盤としては保守ではありますが、水内氏は、地方での地元出身者を推す力に着目します。

水内氏「それに、時が時なら、亀井さんは津和野藩のお姫様なんですよね。津和野藩の地盤はちょっと違うところだって言うんだけど、それを利して余りある有利な環境があるんじゃないかな」

「不戦敗」の長崎3区、「負け隠し」の東京15区 自民

続いては長崎3区、谷川弥一元衆院議員の辞職に伴う補選です。

こちらの立候補予定者は以下の通りです。

立憲民主党:山田勝彦(比例九州)
日本維新の会:井上翔一朗氏(新人)

MC伊藤由佳莉「自民党は候補者を立てられておらず、ということですが……」

長崎県では次の衆院選で選挙区がマイナス1となり、県内でもっとも人口が少なかった現在の長崎3区が新2区と旧4区に編入され、事実上の消滅が予定されます。そのため、今回の補選で当選しても、当選者は次回選挙で選挙区の異動を余儀なくされます。

県内の他選挙区にすでにほかの公認候補を持つ自民党では、新たに候補者を立てづらいところです。

水内氏「ここは不戦敗自民党っていう空気が大勢ですよね」

今野氏「だよね」

加えて谷川弥一元衆院議員は、政治資金の問題で辞職しているということもあり、

今野氏「へんに立てて負けるくらいだったら、勝って行き先がなくなっちゃうだけだから、不戦敗のほうがダメージ少ないよねっていう岸田さんと周りの見解ですよね」

水内氏「(補選の勝敗として)カウントしないようにね」

続いては東京15区。柿沢未途氏が江東区長選挙に関する公職選挙法違反で辞職したことに伴う選挙です。

収録日の3月28日時点で、以下の立候補者が予定されていました。

日本共産党:小堤東氏
日本維新の会:金沢結衣氏
日本保守党:飯山陽氏
参政党:吉川里奈氏

加えて、柿沢氏の前に東京15区で実刑判決を受けた秋元司元衆院議員(元自民党)も、出馬を表明しています。

IR(統合型リゾート施設)をめぐる汚職事件で収賄と証人買収の罪に問われている秋元氏は3月22日、2審の東京高裁で実刑判決が出るも、即日上告しています。

MC伊藤由佳莉「まだ罪が確定していない状態なので、立候補できます」

「政治とカネ」の問題で2代続けて議員が辞職している東京15区ですが……

水内氏「僕はっきり言ってね、東京15区に住んでいる人は不幸の極みだと思いますよ、なんか。これ誰に投票したらいいんですか」

今野氏「オレ住んでるんだよ、有権者。娘に選挙行け、ちゃんと選挙に行かなきゃダメだっていうんだけど、じゃあ誰に入れるんだというとなかなかどうするかね、難しいところ」

公明党や創価学会の反対もある中、自民党の単独候補は厳しいとの見方が強い東京15区。そこで浮上してきたのが、小池百合子都知事率いる、都民ファーストの会との連携です。

水内氏「望むべくは都民ファーストの会に誰か出てもらって、自民公明で推して、なんとかみんなの力で、野党系の人たちをちょっと下げる」

今野氏「自民党による負け隠しですよ。八王子市長選の逆パターン。こんどは小池さんに都民ファーストの候補を出してもらって、推薦や支持を出してもらって乗っちゃおうと」

江東区長選でも見られたように、都民ファと自民党都連が協力しながら勝っていく図式が昨年暮れから続いています。小池知事も、7月の都知事選で自公の支持をがっちり得られれば自身の3選が盤石です。

一方、小池百合子氏の出馬もささやかれていますが、今野氏は「出て、じゃあどうするの?」と可能性を否定します。

今野氏「総理大臣になれる道筋があるならともかく、都知事の道を捨てて出るかっていうと」

水内氏「出る確率は1割、2割。1割もあったら僕すごいと思う」

そのほかの候補は。

今野氏「選挙ドットコムコメンテーターの乙武さんの名前も出てますね。見てくれてるのかなあこれ」

※乙武氏は、3月29日に出馬が明らかになりました

今野氏は、今回の東京15区は島根1区と逆パターンだ、と解説。野党候補がたくさん出ているので自公都民ファで固まることで勝算が出てくると、自民党が都民ファーストの候補に相乗りする可能性が高いと読み解きます。

そしてその都民ファーストからは小池都知事自身が出馬する話もありますが、小池氏本人でなく、近い人か、乙武氏のような人を擁立するという可能性が高いと締めくくりました。

ところで、この東京15区では、立憲民主党も明確に候補者名が出ていません。独自候補として元江東区議の酒井菜摘氏を擁立する声と、元立憲民主党で現在は無所属の須藤元気氏の名前も聞こえてきます。

今野氏「立憲の執行部の中でも、独自候補を立てたいという声もあるけれど、票を割ることになるから。須藤さんが出てきたら、須藤さんにのって、まず自民に勝とうとする意見が多かったですね。私の取材では」

編集部注※須藤元気氏は4月3日に出馬を表明しました

「補選は政権の通信簿」1勝でもできれば可能性が……?

今回の補選が岸田政権に与える影響は、ゲストの両名は「猛烈に大きい。岸田政権の命運が決まるといっても過言ではない」と語ります。

現状の岸田総理の立ち位置は、9月の総裁選での交代は「自明の理」とされています。しかし、4月の補選に1勝でもできれば、「6月に乾坤一擲の衆院解散、信任されれば9月の総裁選もまだ勝てる可能性がある」というほど、今回の補選は大きな意味合いを持つとのこと。

水内氏は、3月27日に公明党の山口代表が語った「来年夏の解散は参院選と都議選があるから近いのはダメ。今選挙をするのは信任を得ていないからダメ」との発言を紹介、4月解散説を打ち切ろうとしたと説明します。石井幹事長も、直近の記者会見で、9月の総裁選後の選挙を匂わせた発言をしていたとのこと。

公明党は、かなり踏み込んで現状の岸田政権にプレッシャーをかけているようです。

今野氏「(山口)那津男さんは優しい。今じゃないよね、来夏の参院選とダブルじゃだめ、秋しかねえだろと」

7条解散など、岸田総理の起死回生策はないのでしょうか。

水内氏「きっしー(岸田総理)って、けっこうタフネスガイじゃないですか。このまま野垂れ死ぬならその前に何かしてやろう、このまま死に絶えることはしない。ので、何かしそうな気もする」

今野氏「7条解散には賛否あるけれど、やることはできるわけですよね」

水内氏「一気に選挙やるって決めたら、その前に犬猿の仲になった茂木さんの首を切って、どかっと(大臣を罷免するなどの)内閣改造をして解散するみたいな……」

最後に、ゲストのお二人の補選の予想は?

今野氏は、「島根で自民党が勝つか負けるかが、岸田政権と今後の自民党の命運を握る」と宣言します。

今野氏「島根はもともとの保守王国で立憲民主党とのガチンコ勝負。今後の衆院選をにらんでも、自民党がどれだけ地方で地力があるのか、ガチのけんかをするのが島根1区。東京15区は都民ファと相乗りだから判定しづらい」

水内氏は、もう少し自民党に厳しい見方を示します。

水内氏「島根は肌感覚でいうと自民党のビハインドが大きすぎちゃって、なかなか背中に追いつくのが難しいんじゃないかなという感覚。島根は負けてしまって、東京15区で形だけでも取りつくろって、次に少しつなげたいというような感じなんじゃないかな」

今野氏「これだけ条件恵まれて負けたら、泉健太(立憲民主党代表)が更迭されるかもしれないね」

最後に、東京15区にお住まいの今野氏は「家族で合わせたら組織票で3票くらいある(笑)家族会議でゆっくり岸田政権の行方を決めますよ」と締めくくりました。

選挙区の皆さん、補欠選挙に行きましょう!

動画本編はこちら!

政治記者が補選に見る自民党と岸田政権の情勢を解像度高く紹介!

選挙ドットコムちゃんねるは毎週火曜日から日曜日に公開!

ぜひ高評価とチャンネル登録をよろしくお願いいたします!

© 選挙ドットコム株式会社