【霞む最終処分】(33)第5部 福島県外の除染土壌 東北・関東に広く点在 処分基準早急に示せ

 東京電力福島第1原発事故で大気中に放出された放射性セシウムは福島県外にも広範囲に飛散した。福島県以外で除染を実施したのは岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の7県。民家や学校、公園などの面的除染は2016(平成28)年度までに完了した。

 福島県外の除染により発生した土壌を保管しているのは2023(令和5)年3月末現在、7県の53市町村で、保管量は計33万198立方メートルに及ぶ。中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)に一時保管している福島県内の除染土壌約1376万立方メートル(2024年2月末時点)の2.4%に過ぎないが、保管場所の数は2万8728カ所に上る。

 保管場所のうち、約9割を占めるのは個人宅の敷地内などの民有地だ。1カ所当たりの保管量は1立方メートル未満が約4割、2立方メートル未満まで含めると約7割で、地下に少量を保管している場所が多い。環境省の担当者は「福島県内とは保管状況が異なる。仮置き場を設置できたのはごく少数で、ほとんどが現場から動かせないままだ」と説明する。

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 福島県外で出た除染土壌は除染が行われた各県で処理するように、放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針で定められている。除染土壌を最終的に埋め立て処分する際も、市町村は国が策定する方法に従う必要があるが、肝心の処分の規則は定まっていない。

 環境省は県外で出た除染土壌の安全な処分方法や管理期間などの基準をつくるため、2017年9月に「除去土壌の処分に関する検討チーム」で議論を開始した。翌年には茨城県東海村と栃木県那須町で除染土壌を埋め立てる際の安全性を検証する実証事業を始めた。

 2021年12月からは宮城県丸森町で除染土壌から草木類を分別し、処分する場合の安全性の実証に取り組んだ。昨年11月までに3県の実証事業で結果が得られた。いずれも埋め立て作業や埋め立て後の管理期間を通し、除染土壌の飛散・流出、放射性セシウムの地下浸透などによる周辺環境への影響は見られなかったとしている。

 検討チームは次回以降の会合で、各実証事業の結果を踏まえた処分基準の策定に向けた詰めの議論に入る。

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 環境省は今年度中に県外にある除染土壌の処分基準を策定する方針だ。一方、福島県内の除染土壌の再生利用や、減容化技術を踏まえた最終処分の基準も年度内に決定する。同時並行で進めることでそれぞれの基準の整合性を図る。

 環境省は福島県内の除染土壌の再生利用や最終処分の基準をつくる上で国際原子力機関(IAEA)の評価結果を踏まえる予定だ。福島県外で保管されている除染土壌の放射性セシウム濃度は、再生利用計画の対象とされる1キロ当たり8千ベクレル以下が99.8%を占め、県内の除染土壌より濃度が低い傾向にある。このため、県外の除染土壌の処分基準の安全性も担保できると考えている。自民、公明両党が3月に首相・岸田文雄に申し入れた第12次提言にも、除染土壌の最終処分に向けた取り組みの強化が盛り込まれている。

 県外で除染土壌を保管している市町村からは処分基準の早期策定を求める声が上がる。環境省放射性物質汚染廃棄物対策室長の林誠は「処分基準がないために自治体に迷惑をかけ続けるわけにはいかない。策定作業を急ぎたい」と話す。(敬称略)

 =第5部「福島県外の除染土壌」は終わります=

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