SNSで私的やりとりはNGに 学校現場からは戸惑いも 県教委が教職員懲戒処分に新基準

 栃木県教委が2日改正した教職員懲戒処分の基準で、児童生徒との交流サイト(SNS)での私的なやりとりを新たに懲戒処分の対象にしたのは、わいせつ行為による不祥事が相次ぐ中、未然防止に一歩踏み込んだ格好だ。不祥事の発端として目立つSNS。ただ学校現場では人間関係の相談などで活用されているのが実情で、やりとりの全面的な禁止には至っていない。「何が私的で何が公的か」。線引きの判断に、一部の教員からは戸惑いの声も上がる。

 「性暴力の根絶に向け、具体的な視点を示しながら、学校で取り組んでもらえるよう周知していきたい」。3日の定例記者会見で阿久澤真理(あくさわしんり)県教育長は、懲戒処分基準の改正の趣旨を説明した。

 今回の新基準は、既に東京都や静岡県などで導入されている。本県と同様、不祥事の多発が背景にある。「子どもたちの被害を食い止めるにはやむを得ない」。県教委の改正を、こう受け止める現場の教職員は少なくない。

 一方で、困惑や疑問を口にする教職員もいる。県立高勤務の50代男性教諭は、部活動の連絡などで日常的にSNSを利用する。「節度を持って使っている現場としては迷惑だ」。処分の対象となる私的なやりとりが明確にならなければ、SNSの使用に一層神経質にならざるを得ないと感じている。

 50代女性教諭も「悩みや教科の質問をSNSで交わし、救われている生徒がいるのも実態」とSNSの有効性を認め、活用の萎縮に一抹の不安を覚える。別の50代女性教諭は「(SNSのやりとりで)公私の明確な線引きはできるのか」といぶかる。

 県教委はこれまでも「私的なやりとり」を禁止していた。今回、処分の対象に加えた一方、SNSを全面禁止にしていないのは「学校に来られなくなった生徒や、聴覚障害のある生徒とのやりとりなどでは有効。その利便性を見逃すことはできない」と、県教委も捉えているからだ。

 「処分」が独り歩きすれば、SNSの有効な活用に影響を及ぼす可能性はあり、県教委には現場への丁寧な説明が求められている。阿久澤教育長は記者会見で「(公私の線引きについて)分かりやすい考え方を示していきたい。管理職の管理下で(SNSを)使っていく」と強調、5月1日の運用開始に向け周知を徹底していく考えだ。

県教委が入るビル

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