歩行者横断中の事故、長崎県内で絶えず… 一時停止率は全国平均以下 県警「ルール守って」

信号のない横断歩道を渡る歩行者=長崎市万屋町(写真は一部加工)

 3月27日昼ごろ、観光客や買い物客でにぎわう長崎市万屋町の市道近く。多くの車が行き交う中、70代男性が信号機のない横断歩道を渡ろうとした時、乗用車が猛スピードで通過し、危うく衝突する寸前だった。「危なかった。(ドライバーは)交通ルールを守ってほしい」。男性は驚きと安堵(あんど)の表情を見せた。
 横断中の歩行者が巻き込まれる事故が、県内で後を絶たない。県警交通企画課によると、昨年の歩行者の事故は413件(前年比4件増)。このうち横断歩道やその付近で発生した事故は191件(同5件増)。横断中の死亡事故は12人で、前年を3人上回った。
 信号機のない横断歩道での事故は53件(同2件減)で、死者は3人(同3人増)。2月には同市滑石3丁目の県道交差点で、横断中の60代女性が右折してきた軽乗用車にはねられ死亡する事故があった。
 日本自動車連盟(JAF)が昨年8月から9月にかけて実施した信号機のない横断歩道での歩行者優先に関する調査によると、本県の一時停止率は42.5%。全国平均の45.1%を下回った。
 県警は歩行者事故の増加や全国平均を下回る一時停止率を受け、17年から県内で進めている「安全横断『手のひら運動』」に加え、「横断歩道『止まらんば運動』」の啓発に乗り出した。
 同運動では、信号機のない横断歩道の手前30メートルの路面に表示されている「◇マーク」の周知や、横断歩道に接近した際の減速などをドライバーに呼びかける。同市戸石町の会社員男性(23)は「人通りが多い時は緩めて運転するが、ふとした時に歩行者を見落としてしまうことも多い」と日頃の運転を振り返る。
 さらに、県警は歩行者の交通事故防止に向けた取り締まりを強化。県警交通指導課によると、昨年の歩行者妨害での摘発は1397件で、前年より409件増えた。道交法によると、横断歩行者妨害に対する行政処分は6千円~1万2千円の罰金が科され、違反点数2点。事故を起こすなどして立件された場合、懲役3月以下または罰金5万円以下の罰則が規定されている。
 県警交通企画課によると、進行方向に向かって右側の道路は対向車が走っているため、注意力が低くなり、事故につながりやすい傾向があるという。事故が多い夜間の運転について「早めの点灯とハイビームへのこまやかな切り替え」を促す。歩行者には信号機のない横断歩道を渡る際、ドライバーに手のひらを見せて、横断する意思表示をするよう呼びかける。同課の小川隆博管理官は「今後、二つの運動の認知度を高めていきたい」と話している。

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