多くの人は「国家公務員=生涯安泰」というイメージを抱いているが、本当にそうだろうか? 人事院の資料を見ると、想像を大きく超える事実が見えてきた。
国家公務員と民間企業、給料の開きは…
日本には、公務員と呼ばれる人が全国に約330万人いる(人事院)。そのうち約60万人は国家公務員で、人事院の給与勧告制度の対象となる一般職の国家公務員は約28.2万人。基本給にあたる平均俸給額は33万4,218円、手当て等を含めた月収は平均41万2,747円となっている。
※ 公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるためのもので、職員の給与水準を民間従業員の給与水準と均衡させることを基本としている。
組織別に平均月収を見てみると、
本府省(対象3万8,833人/平均年齢40.4歳)
→ 44万7,666円
管区機関(対象3万3,302人/平均年齢44.1歳)
府県単位機関(対象2万0,333人/平均年齢44.1歳)
→ 38万8,199円
その他の地方支部局(対象4万2,763人/平均年齢42.6歳)
→ 37万6,882円
施設等機関等(対象4,291人/平均年齢38.3歳)
→ 34万8,622円
となっている。
令和5年度、国家公務員のボーナスとおおよその年収は下記のようになっている。
一般職員の場合
→ 年間4.4ヵ月分・年収676.9万円
定年退職金は下記のようになっている。
常勤職員(対象1万4,283人)
→ 2,112万2,000円
行政職俸給表(一)適用者(対象4,086人)(一般職に該当)
→ 2,111万4,000円
厚生労働省によると、民間企業の給与は下記のようになっている。
大卒者(平均年齢40.5歳)
→ 平均月収40.0万円(手当て含む)/平均年収605.9万円(賞与含む)
※大企業(従業員1,000人以上、平均年齢39.8歳)の場合
→平均月収44.7万円/平均年収702.6万円
また、定年退職金は、下記のようになっている(経団連資料より)。
大卒・大学院卒者
→ 平均1,896万円
※大企業の場合
→ 平均2,243.3万円
統計を見る限り、国家公務員の給与・退職金は大企業よりは少ないが、一般的な会社員の平均よりは多い。
もちろん、仕事の大変さも「民間だから」「公務員だから」と一般化して語ることはできないが、公務員の場合、倒産リスクがない点、手当てが充実している点は、大きな魅力だといえるだろう。
家計の状況、2割の人は「常に赤字」
国家公務員は退職金も年金も潤沢であり、民間企業に勤める人より老後生活はラク――。そんなイメージを持っている人も多いと思うが、実際のところはどうだろうか?
人事院が定年退職した国家公務員を対象に行った『令和5年 退職公務員生活状況調査報告書』から、国家公務員の老後の状況を見てみよう。
現在の本人の平均収入額は「21万~30万円」が26.3%で最多。住居は「持ち家でローン完済済み」が56.6%と半数を超えるが、「持ち家でローン返済中」という人も24.3%で、およそ4人に1人の割合となっている。
Q.本人の平均収入額は?
・10万円以下…9.5%
・11万~20万円…14.9%
・21万~30万円…26.3%
・31万~40万円…10.9%
・41万~50万円…4.0%
・51万円以上…3.8%
Q.現在の住まいは?
・持ち家(ローン完済)…56.6%
・持ち家(ローン返済中)…24.3%
・賃貸(公営/民間)…10.1%
・公務員宿舎…6.0%
現在の家計の状況だが、なんと赤字の人がおよそ4割で、2割弱は「常に赤字」と回答している。
Q.世帯の家計の状況は?
・十分ゆとりがある…3.7%
・いくらかゆとりがある…14.3%
・ゆとりはないが赤字でもない…38.8%
・毎月のやりくりに苦労し、時々赤字になる…23.3%
・常に赤字で生活が苦しい…18.2%
国家公務員でも、悠々自適な老後を送れるとは限らないという実態が見えてきた。また、「定年後に働きたいと思ったか」を尋ねると、8割以上が現役続行を希望。理由の多くは「生活のため」だという。
Q.定年退職後も働きたいと思ったか?
・はい…83.3%
・いいえ…16.4%
Q.定年後も働きたいと思った理由は?
・日々の生計維持のために必要…85.7%
・社会との接点や生活の張り・ 生きがいを持ちたい…44.0%
・経済的により豊かな生活を送りたい…38.1%
・仕事を通じて社会や職場に貢献したい…34.4%
・健康維持のために必要…31.4%
・資格・技術を活用したい…9.7%
そして現在の就労状況を尋ねると、9割弱が就労中だ。
Q.収入を伴う仕事をしているか?
・仕事をしている…87.6%
・仕事をしていない…12.0%
年金だけでは生きていけないというのは、公務員もまた同じ。若いときから資産形成しない限り、「ゆとりの老後生活」を手に入れるのは困難なのだ。
[参考資料]