新型コロナウイルス感染症は4月から通常の医療体制に移行したが、現在も小さな感染の波は続き、後遺症への懸念もある。これからの新型コロナとの向き合い方を、長崎大学病院感染症医療人育成センター長の古本朗嗣(あきつぐ)教授に聞いた。
-感染は続くか。
この1年でも夏休みや年末年始など人の往来が増えた時期に感染は拡大した。今後もある程度の拡大はあり得ると思う。
-公費支援がなくなり、治療薬の自己負担が大幅に増える。
医師の立場としては高齢者や基礎疾患がある人には重症化を防ぐために治療薬を勧めるが、4月からの負担増で希望者が減ることは考えられる。患者さんが判断できるように(医師は)どんなリスクがあるのかなどをこれまで以上に丁寧に説明しなければならない。高額療養費制度が適用できないかなど、きめ細かい対応も必要だ。
-後遺症の状況は。
普通の風邪やインフルエンザと大きく違うのは後遺症の割合が高いこと。以前は呼吸不全で酸素投与が必要な後遺症もあったが、今は倦怠(けんたい)感や疲労感が続く人が多い。学校や職場に通えない人もいる。なかなか理解されず仮病と疑われることで苦しむ場合もある。社会の理解が進んでほしい。
-後遺症の治療は。
さまざまな研究が進み、世界の標準的治療とまではいかないが、少人数の患者に効果が出ている事例はいくつもある。試行錯誤が続いている状況だ。感染した人のうち、ワクチンを接種していた人や治療薬を服用していた人の方が後遺症になる割合が2、3割少ないというデータを報告している論文もある。
-感染が急拡大した際は医療提供体制が危機的だった。今後の備えは。
怖さの一つはスティグマ(偏見・差別)だ。どんな感染症なのか、どうしたら感染を防げるのかなど正しい知識があれば、患者を受け入れてくれる医療機関は増えるはず。こうした人材を増やすためにコロナ禍に発足したのが、医療人育成センター。2年間で看護師や医師をはじめ医療従事者約320人が感染症研修プログラムを受けた。2024年度も継続する。