『ろくでなしBLUES』森田まさのり「アシくんすまん」 断ち切りで掲載されなかったコマの背景が細かすぎる

『ろくでなしBLUES』や『ROOKIES』などのヒット作で知られる漫画家の森田まさのり氏が自身のXで展開している、「アシくんすまん。」シリーズ。ページ内に余白を設けない、いわゆる「断(裁)ち切り/断(裁)ち落とし」になったコマについて、「アシくん=アシスタント」が丁寧に描き込んだにもかかわらず誌面に掲載されなかった“はみ出し部分”があまりに大きかったケースがあるとして、森田氏は申し訳なさを滲ませながら原画を公開してきた。2月18日に「その1」がポストされ、4月3日には「その18」に至っており、そのハイペースから、森田氏が常々この問題を気にしてきたことが伺える。

最新の「その18」では、お笑いと真摯に向き合った人気作『べしゃり暮らし』の一コマが公開された。原画を見ると部屋に積み上げられた「週刊少年ジャンプ」が丁寧に描かれているが、誌面ではほぼほぼカットされている。

森田氏は「積んであるジャンプの自然な乱れ具合とかジャンプのロゴとかなぁ…。頑張って描いてもらったのになぁ…。」とコメントを添えている。わりときれいに片付けられたモノの少ない部屋のなかで、“若者らしさ”が感じられるポイントになっており、「画面の外はこうなっていたのか」と唸らされる。

この「アシくんすまん。」シリーズを通じて、森田氏はカットされるかもしれない部分に至るまで「背景」にもこだわる作家だということが伝わってくる。例えば、「その16」で取り上げられた『ROOKIES』の一コマでは、ガラクタだらけの野球部部室というシチュエーションで、断ち切られた部分に女性のポスターが描かれていた。“男くさい部室”というコンセプトが、画面外にまで完徹しているのだ。

あらためて細かに描かれた原画の数々を見ていると、小物の一つひとつまで人の手で描き込まれていることにあらためて驚きと感動を覚えてしまう。普段ならサラッと読み流してしまうようなページも、ひとつのアートとして楽しむ視点を与えてくれる「アシくんすまん。」シリーズの更新を楽しみにしたい。

(小原良平)

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