「新人プロ初勝利一番乗り」先輩はそこから12連敗…注目が集まる西武・武内夏暉の“次回登板”

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黄金左腕がパ・リーグ王者相手に快投

西武のドラフト1位ルーキー・武内夏暉が3日のオリックス戦でプロ初登板・初先発。リーグ3連覇中の王者相手に真っ向から挑み、7回・85球で被安打はわずか1本。2四球・7奪三振で無失点に封じる快投を見せ、デビュー戦でプロ初勝利を掴んだ。

八幡南高から国学院大を経て、昨秋のドラフト1位で西武に入団したゴールデンルーキー。“大豊作”と言われた昨年の大学生の中でもトップクラスの評価を受けた左腕で、実際にドラフト会議では西武のほかにソフトバンクとヤクルトが1位で指名。3球団競合は度会隆輝(現・DeNA)と並ぶ昨秋の最多タイだった。

はじめてのキャンプからオープン戦、ファームでの調整も順調にこなし、迎えた3日のデビュー戦。本拠地に昨季王者を迎え、投げ合う相手は同じ福岡出身の山下舜平大。「試合前キャッチボールの時から緊張していました」と降板後に振り返った左腕だが、相手が制球難に苦しむ中でストライク先行の危なげない投球を展開していく。

終わってみれば、許した走者は初回一死走者なしから西川龍馬に与えた四球と、3回二死走者なしから福田周平に浴びた唯一の安打、6回一死走者なしから福田に与えた四球の3人だけ。二塁すら踏ませぬ完璧な投球だった。

8回は甲斐野央、9回はアルバート・アブレイユという昨季はなかった新たな勝ちパターンで締め、3投手による完封リレーが完成。3-0で勝利を収め、武内にプロ初勝利がついた。

嬉しいプロ初登板での白星は、今季の「新人プロ初勝利一番乗り」のおまけ付き。西武では2022年の隅田知一郎以来で2年ぶりとなったが、その“先輩”に待ち受けていたのは苦悩の日々だった。

プロ初勝利後に12連敗

隅田は波佐見高から西日本工業大を経て、2021年のドラフト1位で西武に入団した大卒左腕。ドラフトでは西武のほかに広島、巨人、ヤクルトが1位指名で手を挙げ、武内を上回る4球団競合だった。

鳴り物入りでプロの世界に飛び込み、2022年3月26日のオリックス戦でデビュー。7回1安打無失点、二塁すら踏ませぬ快投を見せ、12球団の新人一番乗りでプロ初勝利を挙げた。

ところが、最高のスタートを切った隅田のプロ1年目の成績は「1勝10敗」。そう、開幕2戦目で挙げたプロ初勝利を最後に白星を掴むことができなかったのだ。

2年目の2023年も開幕から2連敗。迎えたその年3戦目、4月19日のソフトバンク戦で待望のプロ2勝目をゲット。実に389日ぶりとなる勝利を挙げ、シーズンを跨いでの連敗は「12」でストップした。

連敗は止まらずともコンスタントに登板機会があったことからも分かるように、中には好投しながら援護に恵まれないといった不運もあったが、まさかあのプロ初勝利から1年以上も勝利がないという状況を想像できた人はいないだろう。

ドラフト時の評価やデビュー戦の相手、さらに投球内容まで酷似した歩みとなっている武内にも同じような苦難が待ち受けているのか、はたまたあっさりと次の登板でプロ2勝目を掴むのか。武内の次回登板に注目だ。

4年連続で左腕が「一番乗り」

その隅田の前の年、2021年の「新人プロ初勝利一番乗り」は楽天の早川隆久。こちらもドラフトで4球団が1位競合した“大学No.1左腕”という隅田や武内と似た境遇の選手だった。

そして、早川も同じようにプロ初登板・初先発で初勝利をゲット。5月のオリックス戦では新人一番乗りの完封勝利も達成している。

その時点でハーラートップの5勝と順調に白星を積み上げていた早川でも、1年目の成績は9勝7敗で2ケタ勝利には一歩届かず。やはりルーキーが一軍の舞台で継続して結果を残していくというのはハードルが高い。武内は“早川超え”を果たし、1年目から2ケタ勝利に到達することができるだろうか。

ちなみに、2020年以降の「新人プロ初勝利一番乗り」を振り返っておくと、2020年がソフトバンクの変則右腕・津森宥紀で、昨季は阪神のリリーフ左腕・富田蓮。2021年の早川から今年の武内まで、4年連続で左腕が続いている。

この傾向がどこまで続くのか、今秋ドラフトから来春の開幕までの楽しみとして覚えておきたい。



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