下山テストコースが全面運用を開始、トヨタ本社からクルマで約30分の研究開発拠点

2024年4月2日、トヨタ自動車は豊田市と岡崎市にまたがる山間部に建設を進めてきた研究開発施設「Toyota Technical Center Shimoyama(トヨタ テクニカルセンター 下山)」の全面運用を3月25日より開始したと発表した。テクニカルセンター 下山は2018年4月から施設の建設を始め、2019年4月より中央エリア、2021年10月より東エリアの運用を開始しているが、このたび、車両開発棟や来客棟を備えた西エリアが完成し、全面運用を開始した。テクニカルセンター 下山は本社からクルマで約30分の距離にある。

施設の中心となる「下山テストコース」はすでに運用開始

トヨタは、100年に一度の自動車事業の大変革時代を迎える中で、将来のクルマに求められる走行性能や環境性能、安全性能をより高い水準とし、世界中のユーザーへ「もっといいクルマ」を届けるために、豊田市の本社地区における研究開発機能を強化している。

トヨタ テクニカルセンター 下山の全景イメージ。高速評価路、下山テストコース、世界各地の特殊な路面を再現した特性路、車両開発棟などの施設で構成される。高速評価路があるのが東エリア、下山テストコースがあるのが中央エリア、車両開発棟があるのが新たに完成した西エリア。

その一環として、総額約3000億円を投資して建設が進められてきたのが、研究開発施設「Toyota Technical Center Shimoyama(トヨタ テクニカルセンター 下山)」。施設の中心となる自然地形を活かした作られた「下山テストコース」は、ドイツのニュルブルクリンクを思わせる高低差と多数のカーブが入り組んだ厳しいコースで、ここを徹底的に走らせることで、『“道”がクルマを鍛え、クルマをつくる人を鍛える現場』として「もっといいクルマ」の車両開発を進めていくとしている。

「下山テストコース」は、造成工事後の2018年4月から施設の建設を始め、2019年4月にカントリー路を備えた中央エリアの運用を開始、さらに2021年10月には高速評価路や世界各地の特殊な路面を再現した特性路などを備えた東エリアの運用を順次開始して、これまで2020年に発表したレクサスISを皮切りに新型車の開発を行ってきた。

車両開発棟や来客棟を備えた西エリアが完成

今回新たに完成したのは、車両開発棟や来客棟を備えた西エリア。カントリー路のある中央エリア、高速評価路や特性路のある東エリアに続いて、西エリアが完成したことで、いよいよテストコースを含む「テクニカルセンター 下山」として全面運用となる。

トヨタ テクニカルセンター 下山の全体図。2021年10月より順次運用が開始されている。

車両開発棟は、レクサスカンパニー、GRカンパニーの事業・開発拠点で、ここでは、企画・デザイン、開発・設計、試作・評価などあらゆる機能のメンバーが、ニュルブルクリンクのピットのようにクルマを中心に集結し、テストコースを走らせることでクルマの課題を見つけ、改良を繰り返しながら、車両の開発を進めていく。

来客棟はビジネスパートナーやサプライヤーとの垣根を越えた「共創の場」。ここでは、開発が進められるクルマを間近に感じながら、新たな発想を促し、イノベーションに向けたオープンな空間として活用していく。

自然と調和する施設として、地域との共生を進めていく

なお、建設にあたっては、環境保全の取り組みとして、敷地面積(約650ha)の約6割で土地本来の森林を残し、保全を行うことに加え、緑地を新たに造成するなど、自然環境の適切な維持・管理を推進。

トヨタ テクニカルセンター 下山、西エリアに完成した車車両開発棟の内部。

2023年3月には、東エリアに環境学習センターが完成し、環境保全に向けて、里山体験イベントなど地域住民との交流の場として活用していく計画で、地元自治体や地域とともに、森林や谷津田など里山環境の保全活動を行うことで、自然と調和する施設として、地域との共生を進めていくとしている。

■全面運用開始式典での豊田 章男会長のコメント

『この施設の構想がスタートしてから30年近く経ちます。地域の皆さまに「トヨタが下山に来てよかった」と笑顔になっていただきたいという想いで、ずっとやってまいりました。この「皆さま」には、本日お越しいただいた“人間”の皆さまだけでなく、古くからお住まいの“動物や植物の皆さま”も含まれております。そんな地域との共生に向け、愛知県、豊田市、岡崎市など行政の皆さまに多大なるご協力をいただきました。また、下山および松平地区にお住まいの皆さま、長きにわたる建設期間、そして、これからも末長くとなりますが多大なるご理解とご支援をいただいていること、心より感謝いたします。GR、レクサスのメンバーなど総勢3,000人が、本日より、ここで「走る・壊す・直す」を繰り返してまいります。私もマスタードライバーとして“下山の道”をたくさん走ってまいります。“下山の道”がクルマをつくる…。生産工場ではありませんが、これから“下山産のクルマ”が世界のあらゆる道を走り、たくさんの人を笑顔にしてまいります。下山で加速していくトヨタの「もっといいクルマづくり」をお誓い申し上げて、これまでのご協力と、これからもずっと続いていく皆さまとの共生へのお礼に代えさせていただければと思います』

■Toyota Technical Center Shimoyamaの概要

所在地:豊田市(旧下山村)および岡崎市(旧額田町)の一部
総面積:650.8ha(100%)
施設用地:159.2ha(面積内訳24%)
道路:7.1ha(面積内訳1%)
調整池:16.2ha(面積内訳3%)
造成緑地:81.8ha(面積内訳13%)
残置森林:386.5ha(面積内訳59%)
用地造成工事:愛知県企業庁
施設建設工事:トヨタ自動車株式会社
主な施設: カントリー路(中央エリア)、高速評価路/特性評価路(東エリア)、 車両開発棟/来客棟(西エリア)
投資額:約3,000億円従業員:約3000人(2024年3月 全面運用開始時)

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