タワマンでの火災がトラウマに… 高層建物での災害、一番注意すべきポイントとは?

タワーマンション(写真はイメージ)【写真:写真AC】

世界各国で問題となっている、タワマン火災

2017年6月、ロンドン西部の「グレンフェル・タワー(24階建てタワーマンション)」で火災が起き、多くの死者を出すという悲惨な事故が起こった。日本でも、22年6月に東京・品川区のタワーマンション18階で火災が発生。こちらはボヤ程度の出火で重傷者が出ることなく済んだが、非常階段を下りることができず避難をあきらめる高齢者もいたと伝えられている。

今回、話を聞いたのは、まさにこのマンションに住んでいたという30代女性。火災当日、早朝に鳴り響いた非常ベルの音がトラウマとなり、目覚まし時計の音にすら恐怖感を覚えるようになってしまったという。

「あの日のことは今も忘れられません。ごく普通の日常が、火事という災害であっという間に消し飛ぶのだと実感しました。夫に手を引かれ、貴重品だけを持って部屋を飛び出しましたが、何をすればいいのか分からず、ただオロオロしていました」

タワマンに住む覚悟が足りなかった、引っ越した方が良いのではないか、と自問自答する日々を送っているという。

「不安を払拭するために、プロの方にお聞きしたいです。タワマンに住むにあたり、心得ておいたほうが良いことはあるのでしょうか?」

火災現場がどこか分かりにくいタワマン火災

戸建てであろうとタワーマンションであろうと、火災など不慮の事故に常に備える必要がある。しかし、いざ避難となるとタワマンにおける難易度は戸建ての比ではないだろう。不動産業界に精通し、20年以上のキャリアを持つ中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯裕樹さんに、経験から分かる範囲で助言をお願いした。

「タワマンなど高層の建物で火災が発生したときの一番の難点は、どの階で火災が起こっているのか分かりにくいという部分にあります。館内放送設備を使い、何階のどこで火災が起こっているのか、情報を共有できるシステムを作ることをおすすめします」

もちろん、避難経路の確認も怠ってはならない。

「こうした非常時にはエレベーターが止まります。低層階ならいざ知らず、30階、40階の高層階から下に降りるのは、高齢の方や小さいお子さん連れの方にとって厳しいことでしょう」

しかも、非常階段に大勢が押し掛け混雑した場合は、いつも以上に時間がかかることもあるだろう。

「火災など非常時においては、数分の違いが生死を分けることがあります。エレベーターが止まった場合にどうするか、家族そろって避難訓練を行っておくことが大切でしょう。なお、建築基準法では、一定の用途・床面積・階数の建物には2箇所以上に直通階段を設置することが義務付けられているので、火元から遠いほうの階段を使うことを忘れずに。延焼を防ぐための防火扉等が設置されているはずなので、日本においてロンドンのような大規模火災は起こりにくいと思うのですが……万が一に備えておくことが大切です」

前述の品川区のタワマン火災で火元となったのは、ベランダに置いてあった家電製品だったという。

「ベランダは、個人の専有部ではなく共用部になります。火災の原因になりそうなものをベランダに置かないなど、防災意識を徹底するよう周知することも大切です」

□姉帯裕樹(あねたい・ひろき)「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。和栗恵

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