難病の妹と生きる姉 自分が輝ける場所で想いを伝える-

難病や障がいと向き合う家族を支援する団体が横浜に集まり、3月、イベントが開かれました。大好きな歌やダンスを通して誰かの背中を押したいと、愛媛から参加した高校生の挑戦を追いました。

難病児、障がい児、きょうだい、家族、支援団体が一堂に

中山穂乃果(ほのか)さん、16歳。家族4人での長旅は、初めてです。

3月23日、難病や障がいと向き合う子どもとその家族を支援する、全国10以上の団体が横浜の大さん橋ホールに集まりました。ピエロの姿で病床の子どもを楽しませたり、入院に付き添う両親をサポートしたりする団体もいます。

イベントを主催したのは、劇団四季や宝塚歌劇団出身の俳優が中心となって立ち上げた「NPO法人心魂(こころだま)プロジェクト」。病院や特別支援学校など、国内外のあらゆる場所で年間100日以上、公演を続けている団体です。

心魂プロジェクトにはプロのほかにも、社会人やキッズ団などたくさんのパフォーマーが所属。穂乃果さんも、その1人です。

妹は12万人に1人の難病

穂乃果さんの妹・結衣花(ゆいか)さん(13)は生まれつき代謝に異常があり、3歳で胃ろうの手術を受けました。国内で12万人に1人と報告される難病「メチルマロン酸血症」と闘っています。

病気や障がいのある兄弟・姉妹がいる子どもは「きょうだい児」と呼ばれ、悩みや孤独を抱える子どもたちも少なくありません。

穂乃果さんの母 理江さん
「いろんな我慢も多くしてしまってたのかなって…。どうしても結衣花の方にかかりっきりだったので『もう私なんか生まれてこんかったら良かったんだろ』みたいな感じで、半泣きで私に言ってきたことがあって…」

―――その時は寂しかった?
穂乃果さん
「寂しかったのかな」

「我慢せずにやりたい」抱えてきた葛藤を歌やダンスに

そんな穂乃果さんが心魂プロジェクトに出会ったのは、おととし12月。もともとミュージカルが大好きだった穂乃果さんは、初めて観たオンライン公演でプロのパフォーマンスに心を奪われ、すぐにキッズ団の一員になりました。

仙台に住むきょうだい児・恵花(けいか)さん(17)と共に歌とダンスを学びながら、これまで抱えてきた葛藤と向き合います。

穂乃果さん
「今まで我慢してた分、自分の想いを伝えて、我慢せずにやりたい」
心魂プロジェクト 共同代表 有永美奈子さん
「それを誰に伝えたい?」
穂乃果さん
「きょうだい児」

そこで芽生えたのは、今も苦しんでいる仲間の背中を押したいという想いでした。

本格的に始まった「きょうだい児」としての活動。横浜のイベントを目標に新たなメンバーを募り、レッスンを重ねてきました。

同じ境遇の人との繋がり-きょうだい児だからこそ伝えられるメッセージ

イベントには一般の人も訪れ、同じ境遇の人たちとの繋がりも生まれます。

穂乃果さん
「私たちのシブリング(きょうだい)パフォーマーが、きょうだい児だからこそ伝えられるメッセージがあると信じて…」

難病の子どもを持つ母親
「自分で切り開いてやっていく力があるのかな。どうしてもお出かけとか時間的なところで制約はかけていると思うので。『もっと抱っこして』と言う時もあるし、言われて初めて『あ、そうだ』って気付いちゃうので、もっと自然ときょうだいさんにも時間をとっていけたらいいなと思います」

自分が輝ける場所で、想いを伝える―

きょうだい児チームとして初めての大舞台。客席には、穂乃果さんの妹・結衣花さんと、恵花さんの姉・紗希さんの姿もありました。

穂乃果さんたちきょうだい児パフォーマーが披露したのは、ミュージカル「マチルダ」の一曲です。

♪二度と我慢はしない 二度と諦めない 子どもたちが反乱起こす 渦巻く歌と 熱いリズム みんな戦え 勝利つかめ 自由のために やるぞ やるぞ

学校や家庭で我慢を強いられてきた少女が自ら未来を切り開いていく物語に、自分たちの境遇を重ねます。

さまざまな想いが込み上げ…こぼれ落ちた涙

イベントの最後を締めくくったのは、心魂プロジェクトの共同代表・寺田真実さんたちプロのメンバーです。

♪よくきたね いろいろあったんだろう 悲しいこと 嫌なこと つらいこと だけどこうしてまた会えたんだよ 笑顔をいっぱいつくろう

心魂プロジェクト 共同代表 寺田真実さん
「生きにくいよっていう子どもたちに選択肢があったらいいなと。そこを心魂はこれからも追求したいと思います」

シブリングパフォーマー 髙野恵花さん(17)
「1人じゃ乗り越えられないことも仲間がいれば乗り越えることもできるから、今は1人ぼっちだなと感じている人も私たちと仲間になって、一緒に進んでいけたらなと思っています」

シブリングパフォーマー 布川瑠花さん(14)
「心魂と出会う前は、自分の我慢している思いとかもぶつけられる人がいなかったけど、自分の心をぱっと明るくさせてくれるようなみんながいて、今はすごく元気になりました」

シブリングパフォーマー 中山穂乃果さん(16)
「自分たちのきょうだい児としての想いを全部パフォーマンスに込められることが、すごく幸せなことだなと。自分たちは団体とつながれて1人じゃないなと感じれているけど、そうじゃない子ももちろんいるだろうし、出会うべき子に出会ったらいいな」

自分らしく輝ける場所で―。

穂乃果さんたちはこれからも、想いを伝え続けます。

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