佐藤優氏 中国は岸田政権の外交政策をどう見ているのか?内政では低支持率で苦しむも…

岸田首相

内政では低支持率で苦しんでいる岸田文雄首相であるが、外交においては同一人物と思えないほどさえている。特に来週水曜日(10日)にワシントンで行われる日米首脳会談の成り行きを中国とロシアが注意深く観察している。

3月末にモスクワのクレムリン(大統領府)筋から筆者のところに興味深い情報が届いた。中国が岸田政権の外交政策をどう見ているかについての分析だ。

<1.4月10日の岸田訪米によって日米軍事協力が強化され新兵器の日本配備が決まれば、中国は政治・軍事における新しい対日行動計画を採択する可能性がある。
2.中国は、ワシントンで開催される日米比(フィリピン)3カ国会議の後、宣言されるであろう新しい対中プロジェクトに日本が積極的役割を果たすと確信している。
3.日米等によって提案される可能性がある、あらゆるタイプの対北朝鮮策につき、中国は、ロシアと共同で、これらを阻止することを決意している。>

中国が軍の近代化を急速に進めている。これに対抗して、日本が米国との防衛協力を強化するのは必然だ。この動きは習近平・中国国家主席が太平洋における中国の覇権的地位を確保しようとする戦略の阻害要因になる。だから日本に対抗する新たなアクション・プログラム(行動計画)を作るというのだ。

これ自体は悪い話ではない。なぜなら中国が帝国主義的な勢力均衡ゲームの主要なプレーヤーとして日本をとらえていることの証左だからだ。対立するところは争い、利益があるところでは手を握るというのが岸田首相と習国家主席が再確認した戦略的互恵関係である。その本質は、アジア太平洋における帝国主義的勢力均衡ゲームに対等の立場で日本と中国が参加するということだ。

また、中国もロシアも、日本のイニシアチブで、日米同盟関係にフィリピンを加えた新たな協力メカニズムを形成していくことが、21世紀版「大東亜共栄圏」を形成していく端緒になるのではないかと警戒している。

中国もロシアも日本が、米国の影響力が低下しつつある太平洋における新秩序を形成する動きに着手したと見ているのだ。客観的に見て中ロの評価は正しいのだが、なぜか日本の国際政治学者には、岸田首相が国際政治における能動的プレーヤーであるという現実が見えないのだ。

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