【桜花賞】「トライアルで負けた阪神JF3着以内馬」は単回収率463% データで導く穴馬候補3頭

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データで見る「穴候補3頭」

今週末の阪神メインは桜花賞。3歳牝馬がスピードを争うマイルGⅠだ。近畿地方は桜の開花が平年より遅かったようで、幸いにも当日は満開のもとでレースが行われることになりそうだ。近くにお住まいの方はぜひ仁川の桜を一度楽しんでみてはいかがだろうか。ちなみに混雑度という意味では土曜の阪神牝馬Sデーの方が快適かもしれない。

話をレースに戻す。レースレコード決着となった阪神JF組に、素質馬チェルヴィニア、1~3月の重賞勝ち馬4頭も加わり、今年の桜花賞はかなりハイレベルなメンバー構成となった。層の厚い上位人気勢に割って入る馬は現れるか。今回も様々な切り口のデータを駆使し、3頭の穴候補を導き出した。

阪神JF時の勢力図は変わらない コラソンビート

まず1頭目は阪神JFの3着馬コラソンビート。休み明けの前走はフィリーズレビューに出走し、単勝1.8倍の圧倒的な支持を受けながらも2着敗戦だった。この結果を受け、人気的にはやや後退して本番を迎える想定だ。

桜花賞は阪神JFと同じ舞台。そして、この4か月の間に勢力図が激変することはあまりない。身も蓋もないが結局阪神JFの上位馬が好走しやすく、下位に沈んでいた馬は苦戦する。データを見よう。

過去10年の桜花賞において、前年阪神JFの1~3着馬は【5-6-3-14】複勝率50.0%、同4~5着馬は【0-0-2-11】複勝率15.4%。6着以下馬に至っては【0-0-0-26】で全滅だ。阪神JFに出ていた馬を買うなら最低でも5着以内、できれば3着以内の馬がいい。

阪神JFで3着以内だった馬のうち、人気の盲点になるのが「前走トライアルに出走して負けた馬」【2-3-1-5】複勝率54.5%、単回収率463%、複回収率137%だ。好走例はレッツゴードンキ、レーヌミノル、ウォーターナビレラなど、いずれも2歳時の活躍で既に賞金が足りていた面々。そういう馬にとって前哨戦はあくまで調整のためのレースであり、負けても評価を下げてはいけないのだ。

京王杯2歳Sの勝利で賞金を確保済みのコラソンビートも、まさに同様のパターンといえる。阪神JFの内容を振り返っても、馬群の内目をロスなく立ち回った上位2頭とは対照的に、こちらは外目追走から4角で前の馬が膨れてくる不利を受けた。それでいて着差0.2秒なら能力差はほぼない。逆転で女王の座につく資格をもった1頭だ。

フェアリーSの株価急上昇中? マスクオールウィン

2頭目はマスクオールウィン。これまでのレース選択は「王道」とは言いがたいが、前記のコラソンビートや重賞2着馬オーキッドロマンスといった骨っぽい面々と戦ってきた。フェアリーS2着から本番へ臨む。

このフェアリーSという重賞の立ち位置が変わりつつある。以前は正直レースレベルが低い年ばかりで、まるで桜花賞につながらなかった。ところが「早期に賞金を獲得して本番まで期間をとりたい」と考える陣営がここ数年で増えたことに伴い、1月という時期設定がむしろ価値を持ち始めた。出走馬のレベルが向上してきた。

フェアリーS連対馬の桜花賞成績を調べると一目瞭然。(1600m戦になった)2009~19年では【0-0-1-16】とボロボロだったのに対し、20年以降は【1-0-2-4】複勝率42.9%、単回収率207%、複回収率205%と株価急上昇中だ。

勝ったイフェイオンももちろん悪くないが、ここではマスクオールウィンをより上位に評価した。前走は予期せぬ出遅れで大外から追い込む形になるも、上がり33.9秒の脚を使ってクビ差2着と収穫があった。派手さはないが1200~1600mで位置取りも問わず結果を出してきた。この対応力の高さは侮れない。

戻ってきた「重賞で怖いミルコ」 セシリエプラージュ

3頭目はフィリーズレビュー3着セシリエプラージュを取り上げる。母アットザシーサイドもフィリーズレビュー2着から桜花賞3着と好走した。8年越しに娘が同じ道を歩む。

鞍上は今期絶好調のM.デムーロ騎手。2024年はここまで勝率10.5%、複勝率34.2%。複回収率112%は人気以上の結果を多くもたらしていることの証明だ。

特に重賞では【1-1-3-8】複勝率38.5%、複回収率196%と冴えわたっている。セシリエプラージュ自身のフィリーズレビューも12番人気3着だったし、早めマクりでしぶとさを引き出したコスモキュランダの弥生賞、不振のエエヤンを軽快な大逃げで立て直した先週のダービー卿CTなど、思い切りのいい騎乗が目立ち始めた。ここ数年はやや成績的に苦しんでいたジョッキーだが、久々に「大舞台で怖いミルコ」が戻りつつある。

ほか、マイル戦で【4-5-1-8】複勝率55.6%、社台ファーム生産馬では【1-3-2-4】複勝率60.0%など、今回は複数の好データが重なっている。今年のデムーロ騎手の「買い時」に合致する。

セシリエプラージュは距離延長となるが、もともとマイル戦で未勝利戦を勝っているので、そこは特に問題とならない。どちらかといえばデビューから3戦いずれも、上がりが33.8~33.9秒とほぼ一定だったのが気になるところ。使える上がりに限界があり切れ味勝負には弱く、ハイペースになれば相対的に浮上するタイプと見ている。前が競り合うようなら出番だ。あとはデムーロ騎手の手綱捌きに期待しよう。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。



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