「日本SFを長く支えてきた貴重な才能」山本弘さん、68歳で死去。翻訳家の大森望さんらが悼む

日本を代表するSF作家の一人である山本弘さんが3月29日、誤嚥性肺炎のため68歳で死去したことが分かりました。早川書房の公式サイト などが訃報を伝えました。

山本弘さんの著書『アイの物語』『神は沈黙せず』の表紙(KADOKAWA/Amazon)

「6年に渡る闘病生活を送った末、穏やかに旅立ちました」と親族が発表

山本さんは2018年に脳梗塞を発症後、闘病生活を送っていました。公式X(旧Twitter)で4月4日、親族が山本さんの死去を報告しました。
「2018年に脳梗塞を発症後、皆様の応援に支えられながら、6年に渡る闘病生活を送った末、穏やかに旅立ちました」
「好奇心旺盛だった故人は良き仲間にも恵まれ、自分の好きなことを全力で楽しんでいたと思います」

「ソード・ワールド」の立ち上げに参画。数々のSF小説を書きながら「トンデモ本」ブームの先駆者にも

東京創元社の公式サイト によると、山本さんは1988年に『ラプラスの魔』で本格的に小説家デビュー。
前年に設立されたクリエイター集団「グループSNE」の一員として、テーブルトークRPG「ソード・ワールド」の立ち上げに参画、『サーラの冒険』シリーズをはじめとする「ソード・ワールド」に基づく小説の執筆などを手がけました。
富士見ファンタジア文庫の公式Xは、訃報を伝える中で「ファンタジア文庫では『ソード・ワールド』シリーズを発表され、ファンタジーライトノベルの礎を築いてくださりました」と感謝の言葉を投稿しました。

山本さんはオリジナル作品のSF小説も数多く発表。代表作は、第28回吉川英治文学新人賞ならびに第27回日本SF大賞候補となった『アイの物語 』のほか、『 神は沈黙せず 』などが有名です。
シリーズ物としては『MM9』『BISビブリオバトル部』シリーズなどがよく知られています。
また、1992年に結成された「と学会」初代会長をつとめました。「著者は大マジメなのに、常識からするとギャグとしか思えない本」を面白がる『 トンデモ本 』ブームの先駆者でした。

「日本SFを長く支えてきた貴重な才能」翻訳家の大森望さんらが悼む

山本さんの訃報に、交流のあった出版関係者から追悼メッセージがX上で相次いで寄せられています。
中国発のSF小説『 三体 』などを手がけた翻訳家の大森望さんもその一人です。

「『時の果てのフェブラリー』、『神は沈黙せず』、『アイの物語』、《MM9》など数々の名作で日本SFを長く支えてきた貴重な才能でした。つくづく残念です」と別れを惜しみました。

シナリオのためのファンタジー事典 』などの著作がある作家の山北篤さんも「SFマインドとオタク心の両方を満たす作品を書く、優れた作家でした」と追悼しています。

また、映画評論家の町山智浩さんは「『と学会』の初代会長で、一緒に『トンデモ本の世界』を作りました。その後も映画秘宝などでお世話になりました」と感謝を述べました。

TVアニメ化された『アリスと蔵六 』などの作品で知られる漫画家の今井哲也さんは「大変残念です。お悔やみ申し上げます」と追悼。
「むかしホームページ上の文章で僕の漫画をほめてくださってたことがあって、当時デビューしたてだった僕はむちゃくちゃ嬉しかったのだった」と思い出をつづりました。
その上で『アリスと蔵六』の主要キャラクターである 美浦歩 (みほ・あゆむ)が着ているパーカーは、山本さんの著書『 UFOはもう来ない 』だとも明かしていました。

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