硬式球への“懸念”「父母から相談多い」 甲子園最速右腕は共感も…早期適応を推すワケ

仙台育英で甲子園出場3度、現BC埼玉武蔵の由規【写真:伊藤賢汰】

硬式か軟式か…中学進学前に悩む球児・親へ語る“155キロ”バッテリーの考え

高校野球の甲子園大会最速「155キロ」の記録保持者である由規投手(現ルートインBCリーグ・埼玉武蔵ヒートベアーズ投手兼コーチ)が3日、野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」が開催するオンラインイベント「甲子園予備校」に出演。仙台育英高(宮城)時代にバッテリーを組んだ元捕手・一丸翔巨さんと対談した。

由規さんが155キロをマークしたのは、仙台育英高3年の2007年夏。甲子園大会2回戦の智弁学園(奈良)戦4回だった。「観客の方々が『わーっ!』と歓声を上げた瞬間、(記録が)出たのかな思って、上(のスピードガン)をちらっと見てしまいました。自分自身の感覚でも手応えはありましたが、あの試合は観客の反応が本当にすごかったです」と振り返る。一方、このボールをミットに収めた一丸さんは「速すぎて捕るのに必死でした」と苦笑する。

由規さんは小4の時、3歳上の兄が所属していたリトルリーグのチームに入団し硬球で野球を始めた。中学でもシニアリーグのチームに所属し、一貫して硬球を握り続けた。

対照的に、一丸さんは2歳上の兄、双子の兄弟と一緒に、軟式野球チームで野球を始めた。中学時代も学校の軟式野球部でプレー。「部活の顧問の先生がすごく情熱的な方で、野球に力を入れてくださったことに加えて、自分の父親も外部コーチを務めていました」と振り返る。

中学時代に硬式チームを選択するか、部活動などで軟式でプレーするかは、選手自身も親も悩むところだ。「実際にその悩みは、少年野球教室などで教えに行った時、父母の方々に相談されることですが、一概にどちらがいいとは言えません」と由規さんは言い、「父母の方々が懸念されているのは、硬式の怪我のリスク。確かに、硬式で死球を受ければ怪我をしやすいですし、軟式をやっている子にとっては硬球は重いので、肘肩の故障が増えるのではないかと心配になるのだろうと思います」と指摘する。

仙台育英で由規とバッテリーを組んだ一丸翔巨氏【写真:本人提供】

中学硬式派・軟式派が指摘するそれぞれのメリットとリスク

しかし、由規さんは次のように持論を述べる。

「僕の考えでは、みんなプロ野球選手になりたいと思う前に、甲子園を経験することを目標にすると思います。そうなると、少しでも早くから硬球に慣れておいた方がいいのかな、と。僕自身は硬式しかしてこななかったので、軟球から硬球に変わる感覚はわかりませんが、軽い物から重い物に変えるより、最初から重い物を扱っている方が、怪我をするリスクは低くなるのではないでしょうか」

一方、中学まで軟式だった一丸さんは「軟式はやはり怪我のリスクが低いと思いますし、部活動なら、毎日練習できるメリットもあると思います」と言う一方で、「硬球はバウンドの仕方も、打つ感覚も違うので、対応するには練習が必要です。僕の双子の兄弟は投手でしたが、『感覚が変わってカーブが曲がらない』と言っていました」と双方のメリット・デメリットを指摘した。

硬式か、軟式か。悩みは尽きないが、プロ野球選手をはじめ経験者の体験談を聞くことは参考になる。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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