イギリスの法律専門家ら600人超、イスラエルへの武器輸出をやめるよう政府に求める

イギリスの元最高裁判所判事3人を含む法律の専門家ら600人以上が3日、イスラエルへの武器輸出をやめるよう求める書簡をリシ・スーナク首相に提出した。

書簡の中で専門家らは、イギリスが国際法に違反する危険性があるため、武器輸出をやめるよう提言している。

スーナク首相は、パレスチナ自治区ガザ地区で人道支援活動を行っていた慈善団体「ワールド・セントラル・キッチン(WCK)」の職員7人がイスラエル軍の空爆で殺害された事件を受け、与野党から圧力を受けている。犠牲者のうち3人がイギリス人だった。

スーナク氏は2日、イギリスは「非常に慎重な」武器のライセンスシステムを持っていると述べていた。

イギリスからイスラエルへの武器輸出は、ドイツやイタリアなどと比べて少ない。また、最大の輸出国であるアメリカとは輸出額で数十億ドルの差がある。

しかし、イギリスが武器輸出を禁止すれば、イスラエルに外交的・政治的な圧力を与えることになる。イスラエルのガザ地区での戦闘遂行方法には、厳しい目が向けられている。

「重大な国際法違反への加担を避ける」

17ページにわたる書簡には、弁護士や法律学の専門家、裁判官など600人以上が署名。これには、最高裁で裁判長を務めたレイディー・ヘイルや、元最高裁判事のサンプトン卿とウィルソン卿なども含まれる。

書簡では、「ジェノサイド条約違反の可能性を含む、重大な国際法違反にイギリスが加担することを避ける」ためには、「真剣な行動」が必要だと指摘。

また、イスラエルへの武器や兵器システムの売却は、国際法における政府の義務を「著しく満たしていない」としたほか、ガザ地区で「ジェノサイドが起きうるリスク」を警告している。

WCKの職員が殺害された後、スーナク首相は英紙サンの取材で、独立調査の必要性を訴えたものの、武器輸出をやめることには言及しなかった。

また、イギリスはイスラエルに対して国際人道法に従わなければならないと「一貫して明言してきた」と付け加えた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、この攻撃を意図的ではなく「悲劇的」なものだとし、独立した調査を約束した。一方で、ジェノサイドだという指摘は「まったく根拠がない」と否定している。

ロビー団体「武器貿易反対キャンペーン」(CAAT)によると、イギリスはイスラエルに対し、データが閲覧可能な2008年以降、5億7400万ポンド(約1100億円)相当以上の武器を輸出してきた。

グレッグ・ハンズ・ビジネス担当相は先に、2022年の4200万ポンドは、イスラエルの武器輸入の0.02%に過ぎないと、議会で述べた。

ビジネス省による武器輸出の許可は、その武器が国際人道法の重大な違反行為に使用される明白な危険がある場合、出すことができない。

与野党の反応は

最大野党・労働党は輸出停止を要求していないが、イスラエルが国際法に違反しているかどうかについて政府内部の法的助言を公表するよう求めている。

デイヴィッド・ラミー影の外務相は、輸出停止には「前例」があると述べた。マーガレット・サッチャー元首相とトニー・ブレア元首相は、それぞれ1982年と2002年にこの措置をとっている。

与党・保守党のポール・ブリストウ議員は、イギリス製の武器がガザで罪のない市民を殺害する行為に使われる可能性があるという考えは「腹が立つ」と述べ、イギリス人援助職員の死は「越えてはならない一線だ」と付け加えた。

一方、元内務相のスエラ・ブラヴァマン議員は、こうした考えを否定。BBCに「我々はイスラエルと共に立ち上がる義務がある」と語った。

現在の紛争は、昨年10月7日にハマスがイスラエルを襲撃し、約1200人を殺害、253人を人質にとったことで始まった。

人質のうち約130人はなお行方が分からず、少なくとも34人は死亡したとみられている。

一方、ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、イスラエルの軍事活動により、これまでに少なくとも3万2916人が殺された。

(英語記事 Arms sales to Israel: Top judges urge UK to halt weapons trade

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