主演作続く吉田美月喜、デビュー6年目で迎えた転機 「強みを見つけていかないといけない」

映画『カムイのうた』や連続ドラマ『マイストロベリーフィルム』(MBS)で主演を務め、今後も主演舞台「デカローグ7 『ある告白に関する物語』」や劇場アニメ 『ルックバック』など、主演作が続く吉田美月喜。先日21歳の誕生日を迎えた吉田に、『カムイのうた』や『マイストロベリーフィルム』での経験や、今後の展望について話を聞いた。

『カムイのうた』は吉田美月喜の新たな代表作に

ーー1月に公開された主演映画『カムイのうた』の上映が現在も全国各地で続いていますが、手応えはいかがですか?

吉田美月喜(以下、吉田):ご覧になって「良かった」と言ってくださる方も多くて、私自身も嬉しいです。長く愛していただける作品になると思っているので、今後も徐々に広がってくれるといいなと思っています。

ーー撮影はいつ行われたんですか?

吉田:ちょうど19歳のときで、2022年の夏と2023年の1月に撮りました。本来は夏の撮影だけで終わる予定だったのですが、撮影が終わってから、監督が冬のシーンも入れたいということで、急遽追加で冬の撮影が2日間入りました。

ーー追撮があったんですね。

吉田:そうなんです。北海道の冬の撮影は本当に寒くて大変でしたが、完成した作品を観て、これは絶対にあるべきだと思いましたし、追撮できて良かったと思いました。

ーー吉田さんが演じたのは、大正期のアイヌ文化伝承者・知里幸恵さんがモデルとなった主人公のテル。知里さんは、吉田さんの撮影時の年齢でもある19歳で亡くなられています。

吉田:19歳で亡くなるというのは、今の自分には全く考えられません。知里さんは、ご自身にとっても大切なアイヌの文化を命をかけて書き残されましたが、私が今なにか大切なものを命かけて残せるかと言ったら、到底できないと思います。最初に台本をもらったときは自分自身とかけ離れているなと思ったのですが、知里さんのことを調べていったりするうちに、自分とも近い、19歳らしい等身大の部分があったことを知って。それは自分にとっても安心だったというか、共感できる部分でもありました。

ーー演じる上でも共通点を見出せたと。

吉田:そうですね。でも当時の方って、時代背景もあると思うのですが、みなさん精神年齢が高いんですよね。そこは憧れるところがありつつも、演じる上では意識しました。普段の自分はあんなにしっかりはしていないので(笑)。

ーー現代劇とはまた違う難しさがありそうですね。

吉田:それこそ今回“時代もの”をやらせていただくのが初めてで。演技で常に和服を着るのも初めてでした。私にとっては憧れの一つだったので、この作品で叶えられて嬉しかったです。

ーー吉田さんの新たな代表作になるのではないでしょうか?

吉田:自分自身、いろいろと学ぶことが多かった作品だったので、そうなったら嬉しいです。海外の映画祭でも評価をしていただいて、ものすごく嬉しかったのですが、日本の方にこそ知ってほしい内容でもあるので、今後も多くの方に観ていただきたいです。

吉田美月喜、俳優業6年目に芽生えた悩み

ーーそんな『カムイのうた』とはうってかわって、2月から始まった連続ドラマ『マイストロベリーフィルム』では、深田竜生さん、矢花黎さん、田鍋梨々花さんと共にクアトロ主演を務めています。“クアトロ主演”というのはなかなかないと思いますが……。

吉田:私も初めて聞きました(笑)。4人それぞれのキャラクターがしっかり描かれていますし、主演の役割も4人に分担されるので、すごく面白い現場でした。撮影は結構タイトなスケジュールだったのですが、キャストとスタッフさんがものすごく仲の良い現場だったんです。なので毎日楽しんで撮影に臨んでいました。

ーー深田さん、矢花さん、田鍋さんとは年齢も近いですよね。

吉田:年が近いからこそ、他のみんながどういうふうにそれぞれのキャラクターを演じるのか、どういうアプローチでお芝居をするのかがすごく興味深くて、いい刺激になりました。

ーー吉田さんが演じた中村千花は自分の本当の気持ちを言えずに悩みを抱えているところもありました。吉田さん自身は悩みを抱えたとき、どうするタイプですか?

吉田:結構周りの人に相談するタイプかもしれません。中学時代からの親友とか家族とか……あと答えてはくれないですけど、たまに飼っている犬に相談したり(笑)。でも何事においても最終的に決めるのは自分自身なので、いろんな意見を聞いた上で、最終的には自分で結論を出すようにしています。

ーー俳優として、最近何か悩んでいることはあったりしますか?

吉田:このお仕事を始めて6年目になるのですが、甘えられなくなってきたことですかね。

ーーどういうことですか?

吉田:5年目までは「まだ5年目なんだ!」と言ってもらえる感じがあったんですけど、芸歴5年を超えると、さすがに許されなくなってくるというか……。

ーー21歳で6年目というのはなかなかのキャリアですもんね。

吉田:やだ、どうしよう……(笑)。

ーー(笑)。主演映画に主演ドラマが続き、順風満帆なキャリアを築いているように見えますが……。

吉田:ありがたいですね。去年から今年にかけて、主演作品をいろいろやらせていただく中で、自分の中でちゃんと強みを見つけていかないといけないなと強く感じたんです。今までは監督に色をつけていただくようなイメージだったんですけど、今後は自分の強みがどこにあるのかを知っていかないと、ステップアップに繋がらないなと思っていて。なので、新しいことに挑戦して、自分の中の武器を増やすことが今年の目標なんです。習い事もちょくちょく始めたりしているので、お仕事に活かせたらいいなと思っていて。

ーーちなみにどういうことをやられているんですか?

吉田:まだ習い始めたばかりなのですが、キックボクシングを始めました。事務所の先輩の山本千尋さんもそうですし、『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(読売テレビ・日本テレビ系)で共演させていただいた清野菜名さんもそうなのですが、アクションができる女優さんがすごくカッコよくて。まだまだ足元にも及びませんが、いざそういう役が来たときに経験があるのとないのとでは全然違うと思うので、身につけられたらいいなと思っています。あと、去年『モグラが三千あつまって』という舞台で主演をやらせていただいたときに始めて歌を唄ったんです。ものすごく難しかったんですけど、歌って楽しいなと思って。なのでそのときの歌唱指導の方に教わりながら、歌も習い始めました。

ーーアクションと歌は今後“強み”になるかもしれませんね。

吉田:今のところ、監督とかによく言っていただける“目力が強い”ぐらいしか強みがないので、この1年は自分の強みを見つけていきたいなと思います!
(文=宮川翔)

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