2024年3月31日。最後の運行を迎えた
JR根室線の富良野・新得間。
ラストランの日。沿線の人々を追いました。
■依田英将アナウンサー:
「画面中央に捉えているのがJR富良野駅です。根室線の富良野・新得間、きょう3月31日をラストランにあす廃止となります。」
31日、最後の運行となったJR根室線の富良野・新得間。
駅は朝からお別れに来た人でにぎわいました列車のヘッドマークは特別仕様。
そこには「ありがとう」の文字が書かれていました。
■鈴木麻友記者:
「いま14時38分、富良野駅発の列車が出発しました。富良野駅を出発しました。」
ふだんは1両編成ですが、この日のために車両を増やして運行しました。
それでも全国からのファンでほほ満席です。
■東京都から:
「感無量です。東京から飛んできました。」
■神奈川県から:
「さみしいですし、人も減っていて時代の流れで仕方ないな。」
富良野・新得間は1907年に開業。
札幌と十勝をむすぶ大動脈として1975年には、1日およそ6000人もの利用があったといいます。しかし1981年に、今の南千歳と新得間に開業した石勝線に札幌から十勝への移動の主役をバトンタッチすると利用客は9割も減ってしまいました。
利用者はその後も右肩下がりで2015年には利用者はわずか1日150人に。年間10億円の赤字路線となってしまっていました。
■記者レポート(2016年):
「新得町の上空です。JR根室線の橋げたがなくなっています。線路が宙づりになっている状態です。」
2016年の台風では空知川が氾濫。東鹿越-上落合間では線路が壊滅的な被害を受けました。復旧費用にはおよそ11億円かかることから鉄路の再開は断念。東鹿越-新得間はバス輸送に切り替え、JRとして運行するものの、列車は走らない区間となりました。
■JR北海道島田修社長(当時):
「ご利用が少なく民間企業の事業として担えるレベルを超えている鉄道路線については/将来にわたり持続していくことは困難。」
2016年、JR北海道は富良野-新得間の廃止の意向を示しました。
そして去年3月、沿線自治体は鉄路の廃止とバス転換に合意しました。
■JR北海道綿貫泰之社長:
「沿線自治体の皆様には苦渋の決断をしていただいたと重く受け止めております。」
■鈴木麻友記者:
「JR幾寅駅は映画『鉄道員』の舞台となった『幌舞駅』として今も残っています。」
1999年公開の映画「鉄道員(ぽっぽや)」。
俳優の高倉健さんが駅長を演じるシーンが幾寅駅で撮影されました。駅にはいまも当時の撮影セットなどが残され、年間4万人以上が訪れていることから、今後も町が維持を決めています。
ここで花の手入れをする南富良野町に住む佐藤圭子さん84歳。
映画の撮影の時には役者やスタッフの食事の炊き出しを担当しました。
■佐藤圭子さん:
「何かの形で後世に残せる形で「紙芝居「なつかしの鉄路」を作ってみました。」
この地域に鉄路があったことを後世に伝えていこうと仲間たちと作った紙芝居、きのうは幾寅駅で披露しました。
■佐藤圭子さん:
「昭和61年10月には無人駅となりましたが、十勝につながる重要な駅でした。」
世代を問わず多くの人が紙芝居に聞き入りました。
■観客:
「そういう時代があったことがわかり、とてもいい紙芝居。」
■佐藤圭子さん:
「うまく伝えられたか心配ですが、たくさんの皆さんに見てもらってうれしい。」
佐藤さんは今後も、紙芝居を披露しマチに鉄路があったことを伝える活動を続けていくといいます。
富良野市の布部駅。
ドラマ「北の国から」で第1話の冒頭シーンが撮影された場所です。
■神奈川県から:
「もともと鉄道が好きで北の国からの大ファンでもあって。(ドラマが)はじまったところがきょうこうして終わるんだろうと思ったら立ち会いたいなって。」
坂口道郎さん88歳、4歳の頃から布部で暮らしています。
■坂口道郎さん:
「田中邦衛さん、たぶんこれ中嶋朋子さん、吉岡秀隆さん。」
ドラマの撮影の時に手に入れた五郎、純、蛍役のサインは、大切な宝物です
■坂口道郎さん:
「布部におりて麓郷に行くんですね、その撮影を駅前でやったわけです。行ったら丁度その場面に出会えたんです。」
布部駅でのお別れセレモニーには「北の国から」の脚本を務めた倉本聰さんも出席。
坂口さんは倉本さんに花束を渡す役を務めました。
■倉本聰さん:
「人間の営みは変わっても自然は変わりませんので布部にお住いの方たち、さみしがらないで頑張ってください。」
■依田英将アナウンサー:
「布部駅のホームにいま列車が定刻でゆっくり入ってきています。駅に列車がやってきました。」
■坂口道郎さん:
「廃線でものがなくなる深い思いがみなさん、それぞれにいろんな形で思っているんですね。」
布部駅の駅舎の廃止後の活用は未定で譲渡先がない場合JR北海道は解体する方針だといいます。
富良野・新得間の最終運行は東鹿越から富良野に向かう午後8時20分発の列車となりました。
■乗客:
「さようなら、ありがとうさようなら。」
■依田英将アナウンサー:
「山あいに大きな汽笛が響きました。もうこの音を聞くことはできません。4両編成、特別なしつらえの最終列車が、ゆっくりと東鹿越駅のホームを離れていきます。」
車内は満員です、そしてありがとうの声も響いています。
最後の旅路は満員のお客さん、そして万感の思いを乗せて、富良野へと列車は走りだしました。」
」JR北海道の経営改善のなかで、またひとつ鉄路が姿を消しました。