いざ、パリ五輪出場を懸けた戦いへ! 大岩ジャパン、精鋭23人の最新序列。サプライズ選出の大学生FWに期待することは?

4月4日、パリ五輪のアジア最終予選を兼ねるU-23アジアカップに臨むU-23日本代表のメンバー23人が発表された。

マリ、ウクライナと対戦した前回の3月シリーズからは、GK藤田和輝(千葉)、DFバングーナガンデ佳史扶(FC東京)、DF馬場晴也(札幌)、MF小見洋太(新潟)、FW植中朝日(横浜)、FW染野唯月(東京V)が選外となり、GK山田大樹(鹿島)、DF木村誠二(鳥栖)、FW内野航太郎(筑波大)が名を連ねた。

また、大方の予想通り、海外組の招集はほとんど叶わず、立ち上げ当初から主力を担ってきたMF鈴木唯人(ブレンビー)、MF斉藤光毅、MF三戸舜介(ともにスパルタ)、FW小田裕太郎(ハーツ)が招集外に。1月にA代表のアジアカップを戦ったGK鈴木彩艶(シント=トロイデン)もギリギリまで交渉を重ねたが、スカッドに加えられなかった。

「昨日のJリーグを観ながら、その試合後の選手の状況、スタッフ間での情報共有を含めて、昨日の夜に決断をしました」

23名を決めるにあたり、大岩剛監督は誰にも想像がつかないほどの苦悩を抱えていたのは間違いない。「(大岩監督は)実は昨日も最後の最後まで、深夜まで悩んでいました」。山本昌邦ナショナルチームダイレクターもそう明かす。

インターナショナルマッチウィーク外の大会となるため、代表に拘束力はない。そのため、Jクラブは1チーム3名までの招集で理解してもらい、海外クラブは独自の交渉のなかで可能な限り呼べるように尽力してきた。

そのため、パリ五輪世代のベストメンバーかと言われると、そうではない。しかし、このルールの中では理想の顔触れが揃ったと言える。

レギュラー争いを見てみると、GKでは小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)とA代表歴を持つ野澤大志ブランドン(FC東京)が正守護神の座を争う構図になる。2人とも3月シリーズで1試合ずつ出場機会を得て、それぞれアピールした。

そのなかでより目立った活躍を見せたのが、ウクライナ戦で躍動した小久保だ。所属クラブで3か月間ほど出番を得られていなかったが、的確な状況判断と思い切りの良いセービングでピンチをしのぐ。定位置争いでは一歩抜け出した印象すらあった。今回は背番号1を与えられており、小久保が初戦からピッチに立つ可能性は高そうだ。

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最終ラインはCBに4人、左右のSBに2人ずつ配置できる陣容となった。CBはDF西尾隆矢(C大阪)が軸。今季は所属クラブで出場機会を掴んでおり、安定感も増しつつある。その西尾の相棒候補はDF高井幸大(川崎)が最右翼になる。3月シリーズのマリ戦でもコンビを組んでおり、連係面に不安はない。直近のリーグ戦でもスタメン出場を果たし、試合勘も含めて今、最も状態が良いCBと考えるべきだろう。

ただ、他の2人も尻上がりにコンディションを上げている。DF鈴木海音(磐田)は3日のリーグ戦では、スタメンで今季初出場を飾り、怪我が癒えた木村も同日に今季初めてピッチに立った。現地入りしてから序列が変わる可能性は十分にあるだろう。

左SBは攻撃面を優先するなら左利きのDF大畑歩夢(浦和)、守備や堅実さに重きを置くならDF内野貴史(デュッセルドルフ)が起用されるだろう。たとえば、押し込まれる時間帯が長くなりそうな韓国戦(グループステージ第3節)やノックアウトステージは内野、攻め込む展開になりそうな中国戦(GS第1節)やUAE戦(GS第2節)は大畑で勝負するなど、相手によって使い分ける可能性はある。

また、内野は左SB以外にも右SBや両サイドハーフにも対応可能。クローザーとしての仕事もできるタイプであり、左SBは相手の特長に加えて、試合展開を踏まえて先発を決めていくことになりそうだ。

右SBはDF半田陸(G大阪)が頭一つ抜きん出ており、その背中をDF関根大輝(柏)が追いかける構図。半田は2022年3月のチーム立ち上げ時から継続的に代表活動に参加しており、大岩監督が求めるビルドアップや守備の立ち位置を最も理解している。

一方の関根は昨春以降に評価を上げ、今年に入って一気に序列を高めてきた。大学卒業を待たずに柏入りを果たすと、開幕からレギュラーポジションを確保。187センチのサイズを活かしたプレーで“違い”を作り、ウクライナ戦ではCKからゴールにも絡んだ。半田とは異なる武器を持っており、相手のフィジカル対策として重宝されそうだ。

中盤はアンカーのMF藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)、インサイドハーフのMF山本理仁(シント=トロイデン)、MF松木玖生(FC東京)が軸だが、Jリーグで好調を維持するMF荒木遼太郎(FC東京)、MF田中聡(湘南)やA代表歴を持つMF川﨑颯太(京都)も力は引けを取らない。

準々決勝まで中2日の連戦が続くタイトなスケジュールのなかで、ローテーションで起用しても力が落ちる心配はないだろう。注目したいのは荒木の起用法。スタートでも力を発揮できるが、ゲームチェンジャーとしての役割にも期待がかかる。疲労が溜まる時間帯に投入されれば、相手が嫌がるのは確かで、勝負所でどのように起用されるか注目したい。

ウイングは右と左で本職の選手は3人しか招集されていない。右はMF山田楓喜(東京V)、左はMF佐藤恵允(ブレーメン)。MF平河悠(町田)は左右両方でプレーでき、3月シリーズでは両サイドで起用されて好パフォーマンスを見せた。

しかし、今回は中2日の連戦が続き、35度近い酷暑のカタールでの戦い。それを考えると、3人で回すのは現実的ではない。そこでサイド起用が想定されそうなのが、本職がCFのFW藤尾翔太(町田)だ。これまでも大岩ジャパンで“ウイング・ストライカー”として右サイドでプレーした経験があり、マリ戦でも同様のポジションに配置された。フレキシブルに対応できる藤尾をうまく使いつつ、対戦相手を見ながら先発メンバーを決めていく可能性が高いだろう。

今回のメンバー選考で最もサプライズだったのが、唯一の大学生・内野だ。

「(3月の活動には呼んでいませんが)継続して行なってきた活動の中で、彼の姿勢やオン・ザ・ピッチの取り組みやプレーの内容、彼のパーソナリティ、いろんなものを考慮しながら、現在の彼の活躍もしっかりと見ています。我々のグループの中でしっかり活躍ができる。チームメイトに信頼される期待を込めて招集しました」(大岩監督)

指揮官が口にしたように、3月シリーズではメンバーに組み込んでいない。しかし、昨年9月のアジア競技大会や10月のアメリカ遠征で内野を高く評価。186センチのサイズはパリ五輪世代のFWにはない武器で、ボックス内の強さはピカイチ。現状では細谷、藤尾に次ぐ3番手の位置付けだが、1点が欲しい場面での起用も含めて、ベンチワークに厚みをもたらす存在として期待がかかる。

泣いても笑ってもU-23アジア杯で全てが決まる。全力を出し切り、パリ五輪出場を掴み取れるか。アジアに与えられた出場枠は3.5。3位以上は無条件で本大会行きが決まるが、4位となった場合はアフリカ4位ギニアとのプレーオフに回る。狭き門を突破するべく、大岩ジャパンが熾烈な戦いに足を踏み入れる。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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