主砲エンビード復帰のシクサーズは、再び優勝候補に浮上できるか?カギを握るのは「本物のコーチ」と評されるベテランのラウリー<DUNKSHOOT>

現地時間4月2日(日本時間3日、日付は以下同)、フィラデルフィア・セブンティシクサーズはホームのウェルズファーゴ・センターで行なわれたオクラホマシティ・サンダー戦を109-105で制し、2連勝を飾った。

シクサーズはこの日、大黒柱のジョエル・エンビードが左ヒザの手術から約2か月ぶりに戦列復帰。24得点、6リバウンド、7アシスト、3スティールの成績で復帰戦を飾った主砲は、1点ビハインドで迎えた残り37秒に逆転のフリースロー2本を決めただけでなく、直後のポゼッションでスティールも奪い、さらに2本のフリースローを決めて勝利に導いた。

そのほかケリー・ウーブレイJr.がゲームハイの25得点に6リバウンド、トバイアス・ハリスが18得点、6リバウンド、ポール・リードが12得点、9リバウンド、キャメロン・ペインが10得点、10リバウンド、5アシストをマーク。エンビード不在の2か月間を11勝18敗と苦しんだ末、今季の成績をイースタン・カンファレンス8位の41勝35敗(勝率53.9%)とした。
シーズンも最終局面。ここからはベテランの経験がより重要になってくるが、シクサーズにおいてその役割が期待されるのが、途中加入のカイル・ラウリーだ。

チームは2月8日のデッドラインに4つのトレードを成立させ、バディ・ヒールド、ペイン、ドラフト指名権を獲得したことに加え、同13日にはシャーロット・ホーネッツとのバイアウト後、完全FAとなったラウリーと契約を結んだ。

ラウリーは加入4試合目から先発を務め、ここまで平均8.5点、4.7アシスト。サンダー戦では27分30秒の出場で4得点、1リバウンド、4アシストと控えめな成績に終わったが、NBAキャリア18年目の38歳がもたらす影響について、後輩のリードはこう話す。

「たくさんある。豊富な経験とチャンピオンシップゲームでプレーしたことがある彼みたいなベテランは、NBAのコート内外のことやレフェリーの癖も知り尽くしている。これは本当に大きなことで、彼は素晴らしいリーダーでもあるんだ。僕だけじゃなくて、チームのみんなを引っ張ってくれる。このチーム全員が正しいプレーをするように導いている。彼は本物のコーチでもあるのさ」 ペンシルベニア州フィラデルフィアで生まれ、大学時代まで同州で過ごしたラウリーは、ポイントガードとして上背こそないものの、183cm・89kgという屈強な肉体を生かしたハッスルプレーと要所の3ポイントでチームを盛り立てる。

今季のシクサーズにはラウリーだけでなく、16年目のニコラ・バトゥーム、13年目のハリス、11年目のロバート・コビントンといったキャリア10年以上を誇るベテランが4人いるのだが、そのなかでもリードにとってラウリーは別格のようだ。

また、今季からシクサーズで指揮を執るニック・ナースHC(ヘッドコーチ)とラウリーは、トロント・ラプターズで長年ともに戦ってきた間柄で、2019年には球団初優勝を分かち合っている。
地元チームに加入後、ラウリーは19試合の出場で平均29.0分、8.5点、2.7リバウンド、4.7アシストに3ポイント成功率39.7%(平均1.6本成功)を記録。決して主役級の活躍ではないものの、コート内外で存在感を発揮していると言っていいだろう。

シクサーズはレギュラーシーズン残り6試合。6位のマイアミ・ヒート(42勝33敗/勝率56.0%)、7位のインディアナ・ペイサーズ(43勝34敗/同55.8%)、とは1.5ゲーム差。対して9位のシカゴ・ブルズ、10位のアトランタ・ホークス(いずれも36勝40敗/同47.4%)とは5.0ゲーム差があるため、8位以上で終えられる可能性は高そうだ。

プレーオフには2018年から6年連続で出場中のシクサーズだが、その間、カンファレンス・セミファイナルを突破したことは一度もない。ラウリーはラプターズで優勝しただけでなく、ヒートでも一昨季にカンファレンス・ファイナル、昨季はファイナルまで勝ち上がった実績があるだけに、シクサーズが必要としていた経験をもたらすことが大いに期待される。

文●秋山裕之(フリーライター)

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