『オッペンハイマー』世界興収10億ドル目前 鍵を握るのは最後の公開国、日本

3月最終週の動員ランキングは、『変な家』が週末3日間で動員38万9600人、興収4億9100万円をあげて3週連続で1位をキープした。公開から17日間の動員は207万8300人、興収は26億2300万円となっている。

初登場作品で最上位の4位につけたのは、昨年7月末の世界公開から8ヶ月、その間にアカデミー賞での作品賞受賞をじめ主要な映画賞を席巻し、ようやく日本公開の運びとなったクリストファー・ノーラン監督最新作『オッペンハイマー』。オープニング3日間の動員は23万1000人、興収は3億7900万円。IMAXなどのラージフォーマット上映の動員の比率の高さから、興収では『変な家』、『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』に続いてトップ3に入っている。

これまで20年近くにわたってワーナーと組んできたノーランが、コロナ禍において親会社の方針で新作を劇場公開と同時に配信リリース(2021年までの暫定処置)すると発表したことを受けてワーナーと決裂、ユニバーサルが配給することなった『オッペンハイマー』。ユニバーサルの大作映画は通常、日本では東宝東和が配給することになっているが、日本では昨年中の公開が見送られた。

一旦は宙に浮いてしまった『オッペンハイマー』の日本での配給を引き受けたビターズ・エンドは、2020年には『パラサイト 半地下の家族』(最終興収47.4億円)など、これまでも大ヒットのポテンシャルがある海外作品の配給を手がけることもあったが、基本的には国内外のインディペンデント作品を中心に配給・製作・宣伝をしてきた小規模の映画会社。過去に『オッペンハイマー』のような日本全国のIMAXスクリーンで上映される作品を配給した実績はなかっただけに、今回は日本公開の実現だけでなく、大規模公開のための根回しにおいても大きな苦労があったはずだ。

今回の『オッペンハイマー』の初動成績は、2020年のシルバーウィークに公開されたノーランの前作『TENET テネット』を少し下回るものの、ちょうど3時間という長い上映時間、作品の政治性を除いたとしても硬派な題材を扱っている作品の特性、そして近年の国内における外国映画の苦境をふまえれば、大健闘と言える数字だ。奇しくも、世界各国で大ヒットを記録した『オッペンハイマー』の世界興収は、日本での興収次第で10億ドルの大台に乗ることになる。ちなみに製作費はその10分の1の約1億ドル、そして興収からの歩合契約でノーラン自身のギャラも約1億ドルと言われている。

(文=宇野維正)

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