県内業者、食品用も回収 影響続く 紅こうじ問題 風評被害へ募る不安

小林製薬の問題で風評被害に悩む永原社長。醸造タンクに記した「笑顔で日々是精進」を見つめて必死に前を向く

 小林製薬の紅こうじ入りサプリメントを巡る健康被害問題で、同社製品を使用していた岡山県内の食品業者が自主回収や顧客対応に追われている。小林製薬の第1報から5日で2週間。サプリ用とは異なり、着色や風味付けなどに使う食品用には問題の青カビ由来物質が含まれていないことが確認されているものの、影響は今も続く。明治期から醤油(しょうゆ)製造を続けるキミセ醤油(岡山市南区妹尾)もその1社で、永原琢朗社長(55)は「長年の信頼を失ってしまうのではないか」と不安を募らせている。

 「ご心配をおかけしております」「商品は回収させていただきます」―。キミセ醤油の本社事務所で、従業員がひっきりなしに鳴る電話に応対していた。「1日400~500件の電話があり、みんな疲弊しきっている」。永原社長がため息をつく。

 同社が紅こうじを使っていたのは「紅麹(こうじ)みそ」と炊き込みご飯の素「紅麹ごはん」の2商品。問題のない食品用だが消費者の不安に配慮して3月25日に自主回収を始めた。マスコミに会社が取り上げられたことで問い合わせが殺到。醤油など無関係な商品まで問題があるのではと、顧客に疑心暗鬼が広がっているのを感じている。

 訪問販売が主体で、2商品の売り先は1万軒超に及ぶ。引き取りの労力も返金の費用負担も重い。紅麹みそは今が食べ頃の季節商品だけに、永原社長は「返品の山を見ると無念さでいっぱいになる。楽しみにしてくれていた顧客にも心苦しい」と嘆く。

 紅こうじには思い入れもある。約30年前、高付加価値商品の開発に向け、地場企業や県工業技術センターと共同で健康によいとされる紅こうじの活用に取り組んだ。回収している2商品はそれを生かし1990年代後半に発売し、人気商品に育てた。今回の問題で紅こうじ自体に負のイメージが付くことも懸念する。

 永原社長は「今は顧客の不安払拭を第一に考えて対応していく。真面目にものづくりに取り組む多くの業者が、風評被害に苦しんでいることを知ってほしい」と話す。

 厚生労働省が3月28日に公表した小林製薬の紅こうじ供給先は全国で173社。岡山県関係はキミセ醤油を含め15社ある。

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