「落雷前は雷鳴ほとんどなし」…積乱雲が短時間で現場到達、気象台「周囲の状況だけでの予見難しい」〈宮崎・高校生18人搬送事故〉

 宮崎市でサッカーの練習試合中に雷が落ち、高校生18人が搬送された3日の落雷事故。鹿児島地方気象台によると、当時は雲の流れが速く、雷を落とした積乱雲は短時間で現場付近に到達した。周囲の雨や雷の状況だけでは予見は難しかったとみられ、同気象台は「屋外で活動する時はインターネットなどで最新の気象情報を小まめに確認してほしい」と呼びかけている。

 同日は、鹿児島県内の出水中央高校と樟南高校も宮崎市の別会場で練習試合に参加していた。樟南高校によると「落雷時は小雨で、雷の音はほとんどしなかった」としている。同気象台によると、南から暖かく湿った空気が九州南部に流れ込み、大気の状態は非常に不安定だった。鹿児島や宮崎には雷注意報が出ていた。

 落雷があったのは午後2時半ごろ。気象庁の「高解像度降水ナウキャスト」によると、積乱雲は同20分ごろには現場周辺にはなく、多くが鹿児島上空にあった。ところが約20分後には現場周辺の上空に到達し、激しい雨も降った。

 「雷鳴が聞こえた時は自分に落ちてもおかしくないと思っていい。建物や車に速やかに避難してほしい」と話すのは、雷などを研究する日本大気電気学会会員で近畿大学教授の森本健志教授(47)だ。身を守るためには気象情報の確認が大切だと指摘し、「イベントを中止するなど勇気ある決断も必要」と訴える。

 森本教授によると、開けた平地に立っていたり、木の下で雨宿りしていたりすると落雷に遭いやすい。木に雷が落ちると、そばにいる人に電流が飛び移るという。気象庁は、建物がない場合は、電柱などの高い物体から4メートル以上離れたところに避難するのが有効としている。

〈関連〉落雷事故があった当時の雨雲の様子。約20分という短時間で現場に大量の積乱雲が移動したことが分かる

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