全国初の路線バス共同運営、「広島モデル」へ初会合 広島市とバス8社、2025年1月めどに法人化

広島市役所で初めて開かれたプラットフォームの実務担当者会議

 全国で初めて路線バスを共同運営する広島市での取り組みで、市と地元バス8社が本格的に始動した。4日、主体となる官民の新組織が市役所で初会合を開き、路線再編や車両更新の計画作りに着手。苦境にあるバス事業を再建し、利用者が便利さを実感できる「広島モデル」の確立を目指す。

 新組織は、1日付で市と8社が設立した「バス協調・共創プラットフォームひろしま」。4日、市役所8階にある会議室で実務担当者たち約20人が机を囲み、新しい運賃体系など利用者を増やすための案を出し合った。事務局を務める市の山本陽明・バス事業再構築担当課長は「会社の垣根を越えて一体感を高めよう」と力を込めた。

 今後、週1回のペースで会合を開催。乗降データを持ち寄って最適な路線の在り方を協議し、再編を進める。新組織は来年1月をめどに法人化。電気自動車(EV)のバスや充電設備を購入し、各社に貸し出す。

 共同運営の背景には、バスの利用低迷による収入減と人手不足への危機感がある。新型コロナウイルス禍で乗客が減り、2022年度の8社の収支は計49億円の赤字だった。事業者側は同年4月に車両の所有と運行を切り離す「上下分離方式」を含む支援を市に求めていた。広島電鉄の椋田昌夫社長はバスの運行に関し「5年、10年先に単独では難しい」と訴える。

 また、8社の運転手は32年度に22年度より14%減るという。不規則な勤務などを理由に若者に避けられ、さらなる減便や最終便の時間繰り上げを招く悪循環に陥る恐れがある。

 市は国、県と共に、バス各社の運行費の赤字の穴埋めに年約8億円を補助してきたが、補助額を拡充する方針。5、6年後に各社の経営が安定すれば、共同運営に取り組まない場合より財政負担を抑えられると見込む。

 一方、紙屋町(中区)とJR広島駅(南区)を結ぶ路線は各社が乗り入れ、1日3千便以上と過密。同じ名称のバス停は「八丁堀」が14カ所、「紙屋町」が8カ所あり、分かりにくい。

 初会合にオブザーバー参加した呉高専の神田佑亮教授(交通政策論)は「従来通りのコストカットでは利用者が離れる。街の発展を支える気概で市民がバスになじむ先駆的な取り組みを実現してほしい」と注文する。

© 株式会社中国新聞社