日本はいよいよ本格的な花見のシーズンを迎える。蹴球放浪家・後藤健生にとって、花も取材活動を彩る対象のひとつだ。日本のスタジアムで花見をするなら、どこがいいか。そんなことを考えていると、花を媒介にして、1985年の平壌、2006年のテヘラン、2つのワールドカップ予選会場の姿が重なった。
■桜が咲き誇る「サッカースタジアム」がある公園
昨年より少し遅れているようですが、3月末から4月上旬にかけて、全国各地から「桜の開花」というニュースが届いてきています。次の週末あたりは、各地で桜が見頃を迎えることでしょう。
週末はサッカーの試合があるので、お花見にまではなかなか手が回りませんが、スタジアム周辺でも桜を楽しむことはできます。
日本のスタジアムの多くは「公園法」に基づいて建設させられており、スタジアムがある公園内の道路にも桜が並んでいることが多いようです。
東京都調布市のAGFフィールド(味の素スタジアムのサブトラック)は、バックスタンド後方に桜が咲き誇ります。また、同武蔵野市にある武蔵野陸上競技場(JFLの横河武蔵野FCの本拠地)も、バックスタンドやゴール裏の土手に多くの桜が植えられています。
近代的な大きなスタジアムでは、スタンドから外の様子(そして桜)は見えませんが、AGFフィールドや武蔵野競技場のような小さなスタジアムはメインスタンド以外はオープンな造りですから、桜見をするには絶好です。
その名に「桜」の一文字を冠する「ヨドコウ桜スタジアム」の中からも桜の花はほとんど見えないでしょうが、スタジアムが位置する長居公園は広大な公園ですから、敷地内には無数の桜が植えられています。
きっと、日本中のそれぞれの地域には、桜の花見をするのにピッタリのスタジアムがいくつも存在するはずです。
■ワールドカップ1次予選が行われる「北朝鮮」平壌へ
さて、日本では梅の花や桜の花が春の訪れを伝えるように、春になると世界の各地にも花が一斉に咲き誇る時期が巡ってきます。
1985年の4月にはメキシコ・ワールドカップ1次予選があったので、北朝鮮の首都、平壌(ピョンヤン)を訪れました。
北国である北朝鮮の冬の寒さはとても厳しく、4月下旬になってようやく本格的な春が到来するのです。北国にはよくあることですが、春が訪れると、いろいろな種類の花が一斉に咲き誇ることになります。
僕が平壌を訪れたのは、まさにそんな花の季節でした。
中でも、最も印象に残っているのが、朝鮮語で「ケナリ」と呼ばれる黄色い花でした。
■金日成国家主席「生家」の近くにある公園で花見
日本語では「レンギョウ」と呼びます。漢字では「連翹」。低木に小さな黄色い花をびっしりと付ける植物です。
金日成(キム・イルソン)競技場のすぐ東にある名勝、牡丹峰(モランボン)公園もケナリで黄色く色づいていました。また、金日成国家主席の生家(と言われている家)がある万景台(マンギョンデ)地区は革命聖地となっていて、大勢の市民が見学(参拝? 巡礼?)にやって来ていましたが、ここでもケナリがとてもきれいでした。
もっとも、彼らにとって「巡礼」は儀式のようなもの。市民は見学をさっさと終わらせると、公園内で持参した弁当を広げて酒を酌み交わして宴会を始めていました(つまり、日本の花見とまったく同じです)。また、万景台には遊園地もありますから、子どもでも楽しむことができます。