国交省ら/JR肥薩線八代~人吉間の鉄道復旧で基本合意、事業費精査などに着手

国土交通省と熊本県、JR九州は「JR肥薩線検討会議」を3日に開き、2020年7月豪雨で被災し不通となっているJR肥薩線八代~人吉間(営業キロ51・8キロ)について、鉄道で復旧することに基本合意した。復旧後の運営は上下分離方式を採用する。事業費は復旧対象とならなかった人吉~吉松間(35・0キロ)を含め、22年3月時点で約235億円と試算されており、3者は事業費の精査に今後着手する。24年度末に復旧後の具体的な利用促進策などを示し、最終合意を目指す。
復旧後の鉄道施設の保有と管理は県と沿線市町村が行い、JR九州が運行に専念する。
JR九州は鉄道復旧に当たり不通区間の将来にわたる採算性を懸念していた。これに関して同日の検討会議では、観光を軸とした地方創生モデルの実現、沿線住民の「マイレール意識」を高めた日常利用の創出を目指すことで県とJR九州が合意した。
復旧事業費の負担を巡っては、国交省が「事業間連携」として河川や道路の災害復旧の一環で流失した鉄道橋梁、線路の復旧を行うことで、試算された約235億円のうち約159億円を負担する案が示されている。残る約76億円についても上下分離方式での復旧に伴い、国と自治体、JR九州が3分の1ずつを負担することになり、JR九州の負担額は25億円程度に軽減される見込み。
流失した「球磨川第一橋梁」「第二球磨川橋梁」は球磨川の河川整備基本方針に基づく計画高水位を踏まえ、従来よりも高い位置で復旧させる予定。球磨川第一橋梁は延長約205メートルを想定し復旧費は約64億円、第二球磨川橋梁は約280メートル、約61億円と試算されている。これらを除く区間は被災前と同じ高さでの線路復旧を目指している。
3者は最終合意に向け、八代~人吉間の鉄道復旧に必要な事業費の精査、運営の在り方、復旧までのスケジュール、数値目標の設定・管理などで具体的な協議を進める。
人吉~吉松間の鉄道復旧については、宮崎県、鹿児島県内の区間を含むため、国交省は別途協議が必要としている。

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