国交省・稲田雅裕港湾局長が会見/能登半島地震被災施設の本格復旧着実に

◇特定利用港湾は個別事情に対応
国土交通省の稲田雅裕港湾局長は3日、建設や運輸の報道機関を対象に記者会見を開いた。能登半島地震の復旧状況や特定利用港湾の指定など、直近の港湾局の取り組みを説明。1日から建設業や運送業に時間外労働の罰則付き上限規制が適用されたのを受け、「業界が持続的に発展していけるよう、制度面や仕組みからも取り組んでいきたい」との考えを示した。
能登半島地震で被災した港湾施設は応急復旧がほぼ完了。今後は北陸地方整備局が3月に策定した設計方針を基に、本格的な復旧に着手する。冬場の日本海は波が荒く海上工事が難しいことから、稲田局長は「施工期間が限られ、1日も無駄にできない状況だ。春、夏、秋にいかに工事を進められるか、しっかりマネジメントしていかなければならない」と述べた。
防衛力の強化に向け、政府は自衛隊や海上保安庁が訓練などで円滑に使えるように整備・拡充する「特定利用港湾」に11施設を指定した。ハード面の整備は国交省が担う。稲田局長は「岸壁の仕様やスペックがこれまでと変わることはないだろう」とした上で、「岸壁を延長して艦船を受け入れられるようにするなど、個別の事情に応じて対応したい」と説明した。
政府は3月、洋上風力発電の設置場所を現行の領海内から排他的経済水域(EEZ)に拡大する再生可能エネルギー海域利用法の改正案を閣議決定した。沿岸から離れた箇所での工事を想定し、作業船が資材などを置く海上の中間拠点の整備を検討する。稲田局長は、EEZの発電設備を深い海域にも設置できる「浮体式」が主流になるとの見解を示し、強風時の挙動や係留索の構造など「山積している技術的課題の解決に向けて、取り組みを加速していきたい」と話した。
港湾工事の脱炭素化に向けた取り組みも推進。二酸化炭素(CO2)排出量削減の目標達成への全体像を描いた「ロードマップ」を近く公表する。2024年度からはCO2の削減に向けた試行工事も実施。低炭素化につながる装備を搭載した作業船や、低炭素型コンクリートを現場に導入し、施工性やCO2の削減効果を検証する。
国交省は新しい公共工事設計労務単価を3月に適用。全国・全職種の単純平均で5・9%引き上げ、過去10年で最大の伸び率になった。港湾関係では作業船の船舶損料も引き上げ、保有者の維持管理を後押しする。稲田局長は「建設会社が働き方改革を進める原資をしっかり確保できるようにする。今後も持続的な建設業界であってほしい」と話した。

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