株価上昇で日本の「幸福度」は上がるのか いつの間にか世界50位前後に低迷しっぱなし(中西文行)

経済大国のニッポン…(C)日刊ゲンダイ

【経済ニュースの核心】

岸田首相は「新しい資本主義」を掲げ、「資産所得倍増」「貯蓄から投資へ」を推進している。現実的に、株式などリスク資産を保有しなければ所得倍増は難しい。「ハイリスク・ハイリターン」は資産運用の常識である。

株主総会の招集通知が先週あたりから届き始めた。各社とも開催日時は平日午前。数社が重なるが出席できるのは1社だ。まして平日に働くサラリーマン株主は出席が難しい。また、総会会場は都心のホテルが多く、地方在住の株主も参加しづらい。当然、新NISAで長期保有を前提に投資を始めた社会人株主も出席しにくいだろう。

投資をスタートさせた人の多くは、「貯蓄は簡単、金融機関に預けるだけ、確定利回り元本保証で安心。一方、株式投資は銘柄選択が難しく、配当や株主優待さえ安定性に欠け、投資元本の毀損リスクもあり、絶えず株価を見ないと安心できない」のである。

投資初心者を含め個人投資家はインターネットの真偽不明の情報サイトをスマホなどで検索。氾濫する「あなたを億万長者に」などのキャッチコピーに惑わされるリスクがある。誰かに忖度されたフェイクや生成AI作成もあふれていよう。

1人当たりの名目GDPの世界ランキングを見ると、日本は2001年に5位だったが、その後は順位を下げ、18年には20位に低下した。IMFによれば直近の22年は、1位ルクセンブルク12万6598ドル、2位ノルウェー10万5825ドル、6位シンガポール8万2807ドル(アジアで1位)、21位に香港4万8154ドル(同2位)、日本の3万3853ドルは31位でG7の中で最も低かった。

3月20日は「国際幸福デー」。世界の国や地域の「幸福度」をランキングにした「世界幸福度報告書」が公表され、日本は143カ国・地域中、51位でG7の中で最も低い。フィンランドが7年連続1位、2位デンマーク、3位アイスランドと福祉や教育が充実している北欧諸国が上位を占め、アメリカは23位と初めてトップ20から外れた。日本はアジアで、30位シンガポール、31位台湾の後塵を拝した。

この報告書は12年から始まり、日本は44位だった。20年には調査開始以来最低の62位に落ち込み、21年56位、22年54位、23年47位と改善傾向も24年は51位と下落に転じた。

経済大国の日本。新NISAによる「株価上昇」→「資産所得倍増」→「幸福」とは思いたくないが……。

衆院議員の任期満了(25年10月30日)を迎える来年、幸福度ランキングは上昇するだろうか。

(中西文行/「ロータス投資研究所」代表)

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