神戸まつりの華「サンバ」の奥深い世界 ブラジルは熱量が桁違い!選ばれし人のみが着る特別衣装が存在

神戸まつりでおなじみの「サンバ」 本場ブラジルでは…

4月21日に兵庫県神戸市で開かれる「第51回神戸まつり」。昨年4年ぶりに開催され大盛況だった港町の一大イベントです。さまざまなプログラムが繰り広げられる中でも歴史が古く、来場者の注目を浴びるのが「サンバ」のパレード。サンバは日本でも知名度抜群です。しかし、ルーツや本場のカーニバルの実情を知る人は少ないのではないでしょうか?

そこで、ブラジルで経験を積んだサンバダンサーで、自身の出身地・神戸市長田区にてブラジル料理カフェを営む一紗(かずさ)さんに話を聞きました。

【写真】さすがのポーズ! 本場ブラジルで活躍した日本人サンバダンサー

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一紗さんは、現在「Café Amazonas "ZUN"」を経営しながら、サンバダンサーとして、イベント出演やレッスン講師としての活動も続けています。

幼少期からシンクロナイズドスイミング(現在「アーティスティックスイミング」)に取り組み、全国大会にも出場しました。サンバとの出会いは、シンクロをやめたあとテレビCMでサンバ風景を見かけたことでした。

「なにか、キラキラして華やかで楽しいことないかな〜と探していたタイミングでした。これなら周りでやっている人もいないし、誰ともかぶらないかも! と祖母に話したら、たまたま祖母の幼なじみがサンバチームを仕切っている方だったんです。そこからとんとん拍子で見学することになり、気づいたら、導かれるようにサンバを始めていました(笑)」(一紗さん)

中学生の頃、サンバを踊るようになった一紗さんでしたが、自身の踊りにどこか満足しない気持ちを抱えていたといいます。そんな状況を脱するべく、22歳のとき、サンバの本場であるブラジルに渡りました。決めていたのは住む場所だけだったといいます。

その後サンパウロのサンバチームの門を叩いた一紗さんは、「パシスタ」と呼ばれる技術系のダンサーポジションに見事合格。以降、歴史あるチームでキャリアを積み重ねました。

派手な衣装を身に着け、情熱的な音楽に合わせて踊るイメージのあるサンバのカーニバルですが、一紗さんによるとその背景も種類も多種多様。カーニバルで使われる曲やテーマも吟味されるのだそうで、チームの中で数回にわたる話し合いや審査「エスコーラ」を繰り返してようやく決まるのだとか。

「毎年チームの幹部でテーマを考案。作曲家が、そのテーマに沿った曲をいくつか制作します。曲の完成後には、チーム内で曲を披露するイベントが毎週開催されます。そこからさらに審査が行われ、翌年のテーマ曲が決定します。同時に、選ばれた総合演出(担当)が、パレード全体の構成、山車や衣装のデザインを決め、制作にとりかかっていきます」(一紗さん)

曲や演出が確定してようやく、打楽器隊を加えた本格的な練習がスタート。なんと1回につき1時間を超えるハードな通し演奏を2回繰り返すというから驚きです。

選ぶ曲やテーマは、チームごとにさまざま。昔から伝わる楽器やサンバステップの“元祖”を大事に守り貫いているところもあれば、近代的なリズムや音を取り入れているところもあるといいます。

サンバの起源について、一紗さんは諸説あるとした上で「アフリカの移民や奴隷たちの信仰や音遊び、ダンス、楽器が元というのが有力。そこから、リオデジャネイロやサルヴァドールという、移民が多かったブラジル沿岸部の地域に伝わり、発展していったとされています」と説明。さらに「それらの地域にくわえ、人種や宗教、文化がミックスされて進化を遂げたものなので、その地ごとでサンバルーツがあります」と話しました。

ちなみに、サンバと言えば……で有名な羽根を背負った衣装も、メンバー全員が着るものではないのだとか。一紗さんもかつて担当した「パシスタ」に選抜された数人のみが着られる、限定且つ特別な衣装なのです。

一紗さんによると、サンバカーニバル自体はブラジル各地で行われているのだそう。「今では、観光地化されたリオのカーニバルが一番有名ですが、迫力で言うとサンパウロのカーニバルも同等ですし、山車の高さはサンパウロの方が高いんです。合格したあとに知ったことですが、私は、サンパウロで一番古く、リオを含めても2番目に歴史のあるサンバチームに飛び込んだようです」(一紗さん)

ブラジルで生まれたサンバは、やがて日本でも親しまれるようになりました。有名なものに「浅草サンバカーニバル」や「沖縄サンバカーニバル」があり、例年5月におこなわれる「神戸まつり」のサンバパレードもそのひとつです。

イベントに参加する人向けに一紗さんが開くサンバレッスンには、幼児から50歳以上のメンバーも大勢通っており、『新しいことにチャレンジしたい!』と、この1年のうちに門を叩いた新たな仲間も多いそう。一紗さんは「サンバは、音を楽しんでいる姿が表現できれば、衣装も年齢も性別も関係ありません」と語りました。

開催間近の神戸まつりには、一紗さんの教え子も参加します。一紗さんは当日に向け「技術的な練習もしつつ、現地ブラジルの心をしっかり表現して、サンバを踊る楽しみを会場の皆さまにしっかり共有したいと思います!」と熱いメッセージを届けました。

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起源、音楽、リズム、開催場所や会場など、地域・チームごとの特色があるというサンバ文化。その背景を知れば知るほど、奥深さに触れられそうです。

(取材・文=つちだ四郎)

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