茨城県警 歩車分離式信号が増加 20年で4倍「安心して横断」

小学校近くで歩車分離式信号が導入された交差点=ひたちなか市外野

交差点で歩行者と車両の通行を分ける「歩車分離式信号」の設置が茨城県内で進んでいる。歩行者が安全に横断歩道を渡れるため、小学校周辺の交差点に整備を求める声が多い。設置箇所は20年間で約4倍に増加したが、児童減少による必要性の低下や渋滞が起きる可能性があるため、県警は周辺の交通事情を見極めながら対応している。

茨城県警交通規制課によると、県内にある信号機6269カ所のうち、歩車分離式は197カ所で導入(昨年12月末現在)。近年は住民要望を受けた通学路対策を中心に、交通量などを勘案しながら設置している。

昨年12月に歩車分離式が導入された「外野小南交差点」(ひたちなか市外野1丁目)は市立外野小などの通学路で、登下校の時間帯は多くの児童が利用する。ボタンを押すと、歩行者側の信号は全て青、車側は全て赤になる。

立哨活動を続ける広木恒夫校長は「設置前は強引に右左折しようとする車を止めていた。分離式になってからは安心して横断できるようになった」と効果を実感しているという。

同課によると、歩車分離式の交差点には、主に①スクランブル②歩行者専用現示(斜め横断不可)③右左折車両分離④右折車両分離-の4方式がある。

警察庁が2002年に全国100カ所の交差点で実施した調査では、導入後に人身事故が約4割減少。人対車両の事故では約7割も減少した。全国の信号機は約21万基で、うち歩車分離式は全体の約4.9%に当たる1万184基(いずれも23年3月末現在)。

警察庁は02年、歩車分離式の整備推進指針を発表。県内では当時44カ所にとどまっていたが、都市部や学校周辺を中心に設置が進んだ。信号機全体に占める割合は3.1%。

県内では近年、整備が一段落したこともあり、新設は21、22年度が1カ所ずつ、23年度が2カ所だった。

歩車分離式を巡っては、車両側の待ち時間が長くなり、渋滞の要因になるなどのデメリットが指摘されている。設置要望が出された箇所でも、将来的に児童減少や学校の統廃合などで必要性が低下する可能性もある。

このため、県警は自治体や住民との情報交換をはじめ、現地調査を重ねて導入の必要性を検討する方針。同課は「真に必要性の高い箇所を選定し、歩行者の安全確保を進める。中長期的に見てよりよい交通環境にしたい」としている。

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